米FTXトレーディング破綻で仮想通貨が下落するリスク

 家計部門で不良債権が急増し、金融システムの不安定感が高まる場合、韓国経済にはかなりの衝撃が及ぶだろう。その一つとして、海外への資金流出が急増する恐れがある。

 もともと、韓国経済では慢性的にドル資金が不足してきたとみられる。世界経済の環境が悪化し主要投資家がリスク削減を急ぐと、韓国からはドル資金が急速に流出した。

 2020年3月中旬、韓国がFRBのドル資金供給によって経済運営に必要な資金を確保したことは記憶に新しい。当時、家計の債務問題が韓国経済のアキレス腱になると懸念する主要投資家は多かった。ただ、最終的には、世界的な超低金利環境の継続期待と住宅価格上昇への強気な見方が懸念を上回った。

 しかし、足元の世界経済を俯瞰(ふかん)すると、家計債務残高の増加を支えた二つの要素がいずれも崩れ始めている。世界的に、金利にはより強い上昇圧力がかかりやすい。FRBは物価を抑えるために金融をさらに引き締めなければならない。政策金利(FFレート)を中心に、米金利はさらに上昇するだろう。

 基軸通貨である米ドルの金利上昇観測と、債務問題の深刻化懸念を背景に、韓国から流出する資金はさらに増加する可能性が高い。インフレの鎮静化と自国通貨安の食い止めのために、韓国銀行も追加利上げを余儀なくされるだろう。金利上昇によって、世界各国で住宅価格にはさらなる下落圧力がかかるはずだ。世界的な半導体市況の調整によって、韓国の輸出減少も懸念される。いずれも、韓国の住宅市場をさらに下押しする要因だ。

 それに加え、米FTXトレーディングの経営破綻を背景に、韓国の個人投資家が購入した仮想通貨の価値が下落するリスクも一段と高まった。今後、追加的に家計債務問題は深刻化し、韓国の社会心理はより強く圧迫されやすい。8月以降はそうした懸念の高まりを背景に、ウォンを売る投資家が増えた。住宅ローンを中心とする家計債務問題は、今後の韓国経済に無視できない負のインパクトを与えるリスクだと考えられる。