「しがみつくミドルシニア」対策として
退職金を「前払い」する企業が増えてきた
途中で辞めると損だから──と退職金目当てで定年まで居座られては、中高年の人件費負担が重くのしかかる。また、グローバル競争で外資と戦う民間企業は、人材採用で高い賃金を示せないから、採用でも不利だ。そこでパナソニックや富士通など一部の企業が、「退職金前払い選択制度」を導入し、リアルタイムに支払うことも可能にした。トータルで税金を余計にとられることにはなるが、国の制度が歪んでいるのだから仕方がない。
パナソニックの退職金前払い制度は、「同期で半分くらいの人が選択しているイメージ」(中堅社員)で、1回のボーナスごとに約13万円ずつ、まとめて振り込まれるという。「退職金前払い制度を選択すると、『辞めるんじゃないか』と思われてしまうし、『会社への忠誠心がない』ととられてしまうので、それを理由に選択しなかった同期もいました」(若手社員)。SMBC日興証券は、退職金前払いを選択すると、月3万7000円ほどを毎月受け取るか、資産運用に回すかのオプションも用意されている。
だが、ほとんどの日本企業にこの選択制度はなく、退職金は強制加入である。そして、若いうちの低賃金を中高年になってから後払いする年功序列型賃金が、まだまだ一般的だ。特に、公務員、JRなど鉄道会社、メーカー、マスコミなどはその傾向が強い。
一方の外資系企業や、昭和を引きずっていない新興のIT企業、コンサル会社などは「PayNow」型だ。
賃金カーブが後払いではなく、実際の業務貢献度に応じて支払うため、20代30代で日本企業から外資に転職すると、ほぼ確実に給料が上がる。プラスして、裏で積み立てられる退職金分も、年単位でリアルタイムに支払うから、会社側の人件費負担は同じでも、年俸を高く提示できる。外資の給料が高く見えるのは、この日本企業の後払い賃金カーブと退職金制度の有無、という理由が大きい。
(本記事は『「いい会社」はどこにある?──自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点』の本文を抜粋して、再編集を加えたものです)