海外トップレベルでの経験で
選手の「自ら考える力」が進化

 前回のW杯を率いた西野監督と、今回指揮を執った森保監督のチーム作りには大きな違いがある。

 西野ジャパンは本田、香川ら経験豊富なベテランたちを呼び戻して「突貫工事」でチームを作った。一方、森保ジャパンは4年間かけて、若手を中心にチームを作ってきた。

 森保監督のチーム作りの手法自体は、西野監督と同じく、選手の「経験」を集積して形にしていくことだった。だが、その中身は大きく違った。

 三浦知良に始まり、中田英寿、小野伸二、稲本潤一、高原直泰ら「黄金世代」、そして本田、香川、岡崎、内田篤人、長友佑都らの世代と続いてきた海外挑戦の積み重ねの延長線上で、現代は多くの選手が若くして海外でプレーできるようになった。

 その結果、本大会に選出された森保ジャパンの面々は、海外クラブチーム所属の選手が過去最高比率の26人中20人となった。また、今大会が初出場の選手が19人いる若いチームとなった。

 彼らの欧州での日々は、かつての先輩たちと大きくは変わらない。欧州人の大男の屈強さ、アフリカ人のフィジカル、南米人のしたたかさに散々悩まされてきた。全ての監督とウマが合ったわけではなく、試合から外されることもあった。

 厳しい現地メディアや敵チームのサポーターからバカにされたり、嫌われたり、差別を受けたりすることもあっただろう。

 だが、そうした経験を積む選手の数は以前から圧倒的に増え、日本人選手の欧州における地位は確実に上昇した。

 FCバルセロナの下部組織出身で、21歳にしてスペイン1部のレアル・ソシエダでプレーする久保建英。ヨーロッパリーグ優勝に貢献した、ドイツ1部フランクフルトの鎌田大地。「デュエル」と呼ばれる1対1の局面での勝利数が、ドイツ1部で2シーズン連続トップに輝いたシュトゥットガルトの遠藤航。

 そうした選手たちのトップレベルでの経験値は、質量ともに段違いに積み上がったのだ。

 彼らを率いる森保監督は、細かな指示を選手に与えないとされる。基本的なコンセプトは示すが、そこから先は選手に主体的に考えてプレーすることを求め続けたという。しかし、森保ジャパンの戦い方は前回大会と比べて、より柔軟に、したたかに、戦略的になった。