「グループステージは奇数で形成」で生じる
不公平と談合試合の懸念

 カタール大会のグループステージは、4チームずつ8グループに分かれて総当たりのリーグ戦を行った。これは32チーム体制になった98年のフランス大会から変わらず、試合間隔や上位2位までの計16チームが決勝トーナメントに進出する点を含めて公平性が保たれていた。

 しかし、インファンティーノ会長は次回大会で、3チームずつ16グループに分かれてグループステージを実施。上位2位の計32チームが決勝トーナメントへ進む構想を表明していたが、各グループを奇数で形成する状況ではさまざまな問題が起こり得ると批判はさらに激化した。

 例えばあるグループがA、B、Cのチームで構成されるとする。奇数ゆえに試合のないチームが必ず生まれ、結果として試合間隔で差異が生じ、チーム間に不公平が生じる。

 これだけではない。Aが先に2試合を終えて最終戦が行われる場合、BとCはAの成績を踏まえて試合結果を選択できる。極端な話、BとCが共に決勝トーナメントへ進むために、意図的に引き分けなどに持ち込むケース、いわゆる「談合試合」の企図および遂行が可能になる。

 グループステージ最終戦が同日同時刻のキックオフで行われる現行方式は、86年のメキシコ大会から実施されてきた。理由はその4年前、82年のスペイン大会のグループ2にある。

 初戦で初出場のアルジェリアにまさかの金星を献上した西ドイツは、続くチリとの第2戦で大勝。チリとアルジェリアを危なげなく下していたオーストリアとの最終戦に臨んだ。

 実は西ドイツ対オーストリアの前日の段階で、アルジェリアはチリとの最終戦を勝利で終えていた。この結果を受けて西ドイツが2点差以内でオーストリアを下せば、3チームが2勝1敗で並び、得失点差で最も劣っていたアルジェリアのグループステージ敗退が決まる。

 果たして、生き残りがかかったはずの大一番は前半11分に西ドイツが先制して以降は、両チームがまったく攻める姿勢を見せないまま終了。世紀の凡戦はW杯の歴史に汚点を残す談合試合として世界中から非難され、86年大会からのグループステージ実施方法の変更につながった。

 グループステージを奇数チームで実施すれば、再び悪しき歴史が繰り返されかねない。少なくとも各グループの最終戦には必要以上に懐疑的な視線が向けられ、余計なプレッシャーにさらされた結果として、試合の質そのものを低下させる悪循環をも生み出しかねない。