それでも怒りが去らずにくすぶるようなら、人知れず、どこかに吐き出すのも一つの方法です。たとえばスマホのボイスメモにワーッと怒りをぶちまけるとか、日記やメモに書き殴るなどすると、かなり気分がすっきり整理されます。怒りを溜めて気分が悪くなることもなく、上手に“怒りのガス抜き”ができるのではないでしょうか。
ただし“怒りのデータ”は、できるだけ早く消去するようにしてください。どこかに漏れると、ケンカの火種をばらまいてしまうことになります。
「非思量」になる
トラブルを「やり過ごす」禅の知恵
悩みや不安、心配事があると、何も手につきません。仕事がはかどらないばかりか、ひどいときは「食事ものどを通らない」状態になります。体の不調も同じ。どこか痛いところや具合の悪いところがあると、そこに意識が集中してしまいます。しかも心身の不調は、気にすればするほど、どんどんふくらむ性質があります。
そういうある種やっかいな状態になった場合は、頭の中を空っぽにして、心を「無」にするのみ。禅では「非思量」になる、といいます。難しいようですが、要は、目の前の問題をあるがままに受け容れ、やり過ごせばいいのです。
心を池、悩みを静かな水面に投げ入れる小石にたとえると、悩んでいるときは波紋が広がっている状態です。それをなんとかなくそうと手を入れると、また新たな波紋ができます。そのようにして悩みは広がっていくのです。
それでも何もしなければ、やがて静かな水面が戻ってきます。「非思量」になるとはそういうこと。心に悩みが生じ、乱れたときこそ、ことさらにジタバタしない。トラブルが去るのを静かに待つのが、健全な心を取り戻す一番の早道です。