新顔銀行の先にあるのが「資産運用」
BaaSによって新しく登場した銀行は、スマホアプリでスピーディーに口座開設ができ、取引もスマホ上で完結する。キャッシュカードも発行しなくていいし(発行を選べる場合もある)、取引によって、その銀行独自のポイントやマイルを貯められる。役割としては生活費用のメイン口座というよりセカンド、サードの位置付けとなるだろう。
お金の出し入れや決済は日常的に起きるため、銀行サービスに乗り出す企業にとって顧客とのタッチポイントを増やすことができる。小売業には売り上げにつながるメリットもある。
たとえばヤマダNEOBANKなら、スマホ決済「ヤマダPay」、デビットカード、ヤマダLABIカードの決済口座にするとヤマダポイントが効率よくたまるので、ヘビーユーザーを囲い込める。高島屋NEOBANKでは、年利換算15%相当の電子買い物券の積み立てができる。
しかし、もっと先に見えてくるのが「資産形成」というキーワードだ。
2024年より、現在のNISAが一新され、新制度が始まる。最初にも触れたが、NEOBANK=住信SBIネット銀行にはSBI証券が、楽天銀行には楽天証券が同グループ内にあり、この2社は常にネット証券トップの座を競っている。現行NISAの口座数でも、SBIと楽天が二強と言っていい。
しかし、ぼんやりしてはいられない。2024年からは投資期間・非課税期間が恒久化され、新規客も乗り換え客も大量に発生すると予想されるのだ。
その頃にはなりふり構わぬキャンペーンが投下されると想像するが、まずは資産運用に資金を振り向けてもらわなくては始まらない。メイン口座ではなく、サブ口座に預金を移動してもらい、それをNISA買い付けの資金として専用にしてもらえばいい。既存客だけでなく、これまで資産形成をしてこなかった層にも顔を売り、投資資金用のセカンドバンクとして使ってもらえれば、将来にわたる長いお付き合いが約束される。
ちなみに、dスマートバンクにも資産運用機能がある。「使うお金はおサイフに、ためるお金は貯金箱に」とHPでもうたうように、用途別にお金を分けることを勧めている。アプリ機能の一つ「はたらく貯金箱」は、ロボアドによる資産運用だ。NISAとは異なるが、積み立て設定もできる。
新顔の銀行の入り口にあるのは預金だが、その先は分かれ道となっており、道の一つには必ず「資産形成はこちら」の看板がある。預金だけでは大きく増やせません。コツコツ積み立て投資をしましょう、と誘うのだ。この図式は、今後どんな銀行が生まれてもさほど変わらないだろう。