はえ縄漁船2団体で
一隻当たりマグロ漁獲量30倍の格差
「かつお・まぐろ漁業における令和3年度のくろまぐろ(大型魚)の漁獲実績の取り扱いについて」
2022年11月21日午後、東京・港区のJR新橋駅近くの貸し会議室で開かれた水産政策審議会資源管理分科会は、特定の漁業種類の特定の年度の漁獲実績をどのように受け止めるべきかという案件について意見交換した。
いったい何のための議論なのか?
ここでいう「かつお・まぐろ漁業」とは、水産庁が太平洋クロマグロの漁獲可能量を割り振る際の漁業種類の一つで、農林水産大臣の許可を受け、北海道沖から沖縄・石垣沖まで広い海域で操業する“近海はえ縄漁業”を指す。
その近海はえ縄漁業には、全国近海かつお・まぐろ漁業協会(近かつ)と新規参入漁船による全日本マグロはえ縄振興協会(全マ協)という2つの団体がある。全マ協の旗艦となる漁船は「金虎丸」といい、キントラ船団と呼ばれる場合もある。
漁業者からの漁獲報告にウソや漏れがあったわけではない。水産庁による集計ミスもない。水政審の資源管理分科会で問題になったのは、この2つの団体に所属する漁船のマグロ漁獲量の格差だ。
資源管理分科会資料によると、2021年漁獲実績は241隻の近かつ所属船が332トンだったのに対し、わずか5隻の全マ協は222トンにのぼった。1隻あたりの平均漁獲実績は、近かつ1.4トンに対し、全マ協44.4トン。30倍以上もの格差がついていた。
国の審議会は通常、政策の骨組みや方向性を話し合う。クロマグロ漁には農林水産大臣の監督下にある大中型まき網漁業、かじき等流し網漁業、それに都道府県知事を経由して配分する沿岸の定置網、釣り漁業も関わっている中で、近海はえ縄漁船の漁獲実績だけを抜き出して議論するのは異例だが、それなりの理由があった。
過去のクロマグロ漁獲実績を将来のIQの算定に使う制度が近海はえ縄漁業で2022年からスタートしていて、将来算定基礎データを更新する際、2021年の実績をそのまま使ってよいかどうか水産庁が委員に意見を求めたのだ。