同性婚差別の荒井発言が開いた、自民党のLGBTQ巡る大問題1月16日、首相官邸に入る首相の岸田文雄(手前)。右奥は首相秘書官の荒井勝喜(当時)。左奥は長男で首相秘書官の翔太郎。荒井の差別発言によって、岸田は「内憂外患」に直面している Photo:JIJI

 ロシア南部のソチで冬季五輪の開会式が行われたのは9年前の2月7日。しかし華やかな開会式は一転して国際政治が激しく火花を散らす場となった。当時はロシアも先進国首脳会議(G8)のメンバー。このうち欧米6カ国の首脳全員が開会式をボイコットしたのだった。日本の首相、安倍晋三だけが北方領土を巡る日ロ交渉への影響を考慮して出席した。

 6カ国首脳の欠席の理由は、ロシア大統領のプーチンが「同性愛宣伝禁止法」を制定したことにあった。この法律は「伝統的家族価値の否定を宣伝する情報から子供を守ること」が目的とされた。しかし、同性愛の嫌悪に基づく暴力の誘発、正当化につながるとして欧米各国から強い批判が出て開会式のボイコットにつながった。

 この年のサミット議長国はロシアで、会場もソチに決まっていたが、「ソチサミット」は中止され、急きょベルギーのブリュッセルで開かれている。ロシアは五輪閉会直後、ウクライナのクリミアを軍事力で併合してG8を追われることになる。その発端がソチ五輪の開会式といってもいい。性的少数者(LGBTQ)に対する差別に国際社会は極めて敏感なことを浮き彫りにした。

 このことを当時外相だった首相の岸田文雄が知らないはずはない。ましてや5月には岸田の地元の広島でG7サミットが予定される。しかも岸田は議長を務める。このため岸田は第2次内閣発足時に元防衛相の中谷元を国際人権問題担当の補佐官に起用している。にもかかわらず日本の権力の中枢である首相官邸からあり得ない発言が飛び出した。