「まどろっこしい」ことこそ、職場のコミュニケーションに重要
同じようなご意見は、職場のコミュニケーションをテーマにした講演でもいただきました。
「相手のミスを指摘する時」の方法として、相手を傷つけない言い方をする、クッション言葉を使うという意見が上がった時、参加者のある男性は「怒ったり、怒鳴ったりすればいい。早いから」とおっしゃいました。
一時的には、それでいいでしょう。しかし、長い目で見た時、ミスをすれば怒られる会社で、改善する理由が「怒られたくないから」という恐怖心や自己保身では仕事の質は上がりません。失敗した時の報告を躊躇したり、隠蔽(いんぺい)したりすることも懸念されます。一見、早い解決と思われることが、中長期的には良くない結果を引き起こしかねないのです。
そのことをお伝えしたところ、その男性が「そんなまどろっこしいこと、やっていられない」とおっしゃったのですが、正直なご意見だと思います。しかし、「まどろこっしい」ことがポイントなのです。
職場で仲間とともに働くのであれば、相手への敬意、配慮なしではコミュニケーションはうまくいきません。そして、人は自分に対して丁寧なコミュニケーションを取ってくれているのか肌で感じるものです。自分を大切にしてくれる人に心を許し、信頼するのは当然のことでしょう。雑なコミュニケーションから良い結果は生まれないのです。
丁寧なコミュニケーションは、相手の状況や気持ちをくみ取ろうとすることから始まります。そのためには相手の表情や様子をよく見て、声をよく聞き、想像力を働かせることが大事です。こうした行動はエネルギーを使うので、「まどろっこしい」ことなのです。