有用だが頼りすぎは危険
「使い分け」がイノベーションを生む
ここからは私の意見になるが、今回紹介した「守りのテクニック」は非常に有用であるがゆえに、ビジネスパーソンが頼りすぎるのは避けた方がよさそうだ。
「クレームは宝の山」という言葉もあるように、どんなに理不尽に聞こえるクレームや無理難題に見える要求であっても、わずかな「一理」が見つかることがある。それが思いがけない改善策や改革につながることもあるだろう。
要はケースバイケースであり、状況や相手によって対応の仕方を変えるべきということだ。上記のようなテクニックを身に着けつつ、駆使してもいい場合と、そうではない場合をしっかりと見極める。その判断能力を磨くことが重要なのだ。
無駄なコミュニケーションはさっさと切り上げてアイデア創出に時間を割く。耳を傾けるべき意見はしっかりと取り入れる。この「使い分け」の精度を高めれば、仕事の生産性も向上し、イノベーションにつながるのではないか。
おそらく、経験と実績が豊かな公務員は、的確な「使い分け」ができるセンスを身につけている。そして、そうしたセンスは、公務員以外のビジネスパーソンにとっても有益なものと思われる。
ぜひ本書を手に取り、仕事上の対人スキルや判断能力を磨く一助としてほしい。
(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)