章男氏は「佐藤次期社長を軸とする新チームのミッションはトヨタをモビリティカンパニーにフルモデルチェンジすることで、私はそれを支える」とする。

 章男氏のリーダーシップが強いだけに、社長交代しても「会長として院政」を敷くことになるというのが大方の見方だったが、先の会見に章男氏は出席せず佐藤次期社長以下に任せたことや、労組との春季交渉にも佐藤次期社長が会社側のトップとして交渉に臨んだことを見ると、章男氏は大所高所の支え役に徹する可能性も大きい。

 そうなると、反対に章男氏の対外活動への比重が大きくなるということか、という見方もできる。

 それでも章男氏は、トヨタ社長交代に伴い自工会会長職の辞意を表明した。これは、自工会理事の就任に関して「各社の執行をつかさどる社長であること」を申し合わせているためだ。

 これを受けて自工会では副会長・理事を対象とした臨時の理事ミーティングを開催したが、大方が章男会長に続投を望み、結論は保留となっているようだ。自工会は、3月中にも定例理事会で会長問題を協議して結論を出すことになるが、今秋の「ジャパンモビリティショー」開催を控えており、任期も来年6月まで残されていることから豊田章男会長の続投を強く要請することになりそうだ。

 ところで、新体制について意外だったのが、1年前に就任した50代前半の3人の副社長をいずれも外して、60歳の中嶋裕樹氏と事業・販売を担う59歳の宮崎洋一氏を新副社長に昇任させたことだ。必ずしも世代交代の若返りではなく、実務重視ということの表れにも映る。さらに元副社長の小林耕士氏(74歳)は「番頭」、河合満氏(75歳)は「おやじ」としてエグゼクティブフェローを続けることになる。