ニュースで見聞きした国、W杯やオリンピックの出場国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋して世界の国を紹介する。
中央アジアってどんな地域?
カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、中央アジア諸国は、広大なユーラシア大陸のほぼ中央部に位置し、多くの共通点を有しています。
自然環境は、大部分が乾燥帯に属しているため、伝統的にラクダ、ヤギ、羊、馬などの牧畜が行われてきました。
一方、東には世界の屋根と呼ばれるパミール高原や天山山脈が連なり、豊富な雪解け水が河川や伏流水となり大地を潤し、河川のほとりやオアシスでは集落が形成され、灌漑農業が行われてきました。
中央アジアがトルキスタン(トルコ人の土地)とも呼ばれることからわかるように、タジキスタン(ペルシャ語系)を除いてトルコ語系の言語を用いる国が多く、宗教は多くの国民がイスラームを信仰しているという共通点を持ちます。
歴史的には、古くからヨーロッパとアジアを結ぶシルクロードの要衝として発展してきた地域であり、まさにあらゆる面においてヨーロッパとアジアが出会う場所なのです。
ソ連時代の影響が残る国々
他方、現在でもソ連・ロシアの強い影響を受けている点も共通しています。
1917年のロシア革命は直ちに中央アジアにも波及し、各国は1924年以降順次ソ連を構成する共和国として発足しました。
ソ連時代には、計画経済のもと自然改造計画に取り組み、運河建設などの大規模な灌漑開発により綿花や小麦の増産に成功しました。
しかし、大規模な塩害の発生や過度な取水によるアラル海の縮小といった自然破壊、単一商品作物や鉱産物資源に依存した産業構造、ロシア経済への依存体質など、1991年の社会主義体制崩壊以降も、ソ連時代の負の遺産を払拭できないでいます。
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)