リーダーが自分の状態を知ると
1on1の質が深まる
前田 ムードメーターを使うと、相手のことを知るだけでなく、自分の状態を知ることができるのも大切なポイントです。ムードメーターを使うと、基本みんな黄色(ハッピーで熱量が高い状態)の状態になることが多いですよね。
池照 基本的に、黄色が多いですよね。
前田 でも本来は、黄色の中にもいろいろあるはずですよね。例えば、昨日スタッフと話していたときに、「僕は今日、あまり寝ていないから今『Sleepy(眠たい)』のところかな」と伝えたんです。すると「じゃあ、会議は15分で終わらせましょうね」となったんです。
ムードメーターを使うと、自分のことも伝えやすいし、「管理職だからしっかりしなきゃ」といった管理職らしさを無理に演じる必要もない。部下の立場でも、ムードメータがあれば、「僕は今しんどいけれど、仕事だから『真面目に頑張ります』と言わなきゃ」と思わなくてもいいんだということを教えてくれる。それも大きなメリットですね。
池照 分かります。うちのチームでは毎朝、必ずムードメーターで自分の状況を報告してから1日をスタートしています。実際に使い始めて半年経ったころに、私は黄色しか出していないことに気が付いたんです。
半年間、ずっと黄色……。でも、実際にはそんなことはあるわけないですよね。私だって寝不足なときがあるし、調子がよくないときもある。それなのにメンバーには黄色と言い続けてきた。この出来事を通して、「私はすごく見栄っ張りなんだ」と気づきました。メンバーの前では「いつも元気な池照さん」でいたいという思いが強いんですね。
前田 見栄っ張りな自分に気づいて、どう変わっていったんですか。
池照 見栄を張ってしまうことに関しては、そんな自分が嫌いではないのでいいと思っています。ただ、それでも大変なときもあるし、パツパツのときもあります。そこで「もっと良いリーダーになれるようにフィードバックくれないか」とメンバーにお願いをしたんです。
するとメンバーからは、「もっと事前に助けを求めてほしい」とか「何をしているのかもっと開示してほしい」という意見をもらって。そこから、もっと積極的に自分を開示するようになりました。
それまで私は、「自分が9割くらいまで形にしてから、残りの部分をメンバーにやってもらおう」と考えていたんだと思います。「メンバーに迷惑かけてしまうのではないか」「二度手間になったら申し訳ないな」という気持ちがあったんです。
でも、フィードバックを受けて自分を開示できるようになってからすごく楽になったし、1on1の時間も深まっていきました。
前田 池照さんの『感情マネジメント』でも、まずは自分の感情を知って、そこからだと書いてありますね。他人はそう簡単に変わってくれるものではありません。自分がまず変わることで、相手との関係性や環境を変えていく。それが大事ですよね。