値上げ時代の値下げパターン(1)
目玉商品をピンポイントで値下げ
一つめの値下げ戦略はマクドナルドのポテトのように「集客の目玉を一つ二つ、どんと値下げする」という事例です。似た例がいくつも見当たります。
今年4月、卵の値段が異常に値上がりした時期がありました。鳥インフルエンザのまん延を防ぐために鶏の大量殺処分があり、日本全体で卵が不足したのです。そのため、飲食業界全体で卵料理の価格を値上げしたり、卵メニューを一時的に中止したりという事態が起きました。
そのときに、丼と京風うどんを提供する「なか卯」が看板メニューの親子丼の並盛を40円値下げしたのです。ちなみにライバルの吉野家は、前年に復活させたばかりの親子丼の販売を中止しています。
吉野家とは正反対の施策だったこともあり、このニュースは大いに話題になりました。
ここが、このタイプの値下げ戦略のポイントです。消費者が欲しいものをピンポイントで値下げするから話題になります。話題になるということは宣伝になるわけで、そうなると値下げ分の原資は原価ではなく広告宣伝費で補填することができます。
余談ですが、厚木のパチンコ店マルハンの駐車場で車152台が燃える火災がありました。仕事をサボって営業車でパチンコをしていた従業員が車を燃やしてしまい、観念して社長に謝罪したところ、営業車を1台失ったけどこれで話題になればなんとかなる、と従業員を許したそうです。
おとこ気にあふれたこの社長の会社は、「車買取レンジャー」だそうです。この記事で、少しでも従業員の損失を取り戻してください。
さて、このタイプの値下げの話に戻ります。デニーズでも6月中旬から7月にかけて人気アルコールメニューの値下げキャンペーンを行いました。サントリーのプレミアムモルツが100円引き、メガ角ハイボールが170円引きと庶民の懐に優しいキャンペーンでしたが、これも夏枯れしそうな集客対策として値下げ分は販売促進費から充当される事例です。
このパターンの値下げでこの夏、最大規模のキャンペーンになったのが東武ストアの「8月限定、厳選168品値下げ」のキャンペーンでしょう。背景にある事情は、マクドナルドと同じはずです。
この酷暑と値上げラッシュ、人件費増のトリプルパンチで、スーパーの販売は苦戦しています。とにかく話題を作り、既存客にお店に戻ってきてもらうきっかけを作らないとこの苦境は乗り切れないというわけです。