トヨタ自動車の佐藤恒治社長は就任以来、矢継ぎ早に電気自動車(EV)に関わる施策をぶち上げている。EV主導のモビリティ産業においても、トヨタはハイブリッド車で築いたような「黄金時代」を築けるのか。特集『史上最強 トヨタ』の#2では、王者テスラをターゲットにした「30年にEV逆転」計画の要諦をひも解く。出遅れたEV戦略の立て直しが始まった。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
新社長がゲリラ的にEV施策ぶち上げ
テスラ「ベンチマーク」の追撃策
トヨタ自動車で14年ぶりの社長交代が実現し、鳴り物入りの新社長デビューから5カ月が経過した。4月の就任直後から、トヨタ社長の佐藤恒治氏は電気自動車(EV)に関わる重要戦略をゲリラ的に打ち出している。
まずは、会長の豊田章男氏が社長時代に打ち出した「2030年までにEV350万台を販売する」という目標を前倒しし、「26年までにEV150万台を販売する」とハードルを一段引き上げた。
これは、米テスラが10年余りをかけて成長させた販売台数を、わずか3年で成し遂げるという野心的な計画だ。
続く6月には、トヨタの東富士研究所(静岡県裾野市)において、「トヨタテクニカル・ワークショップ2023」を開催。報道陣やアナリスト向けにEVを主軸とする次世代技術の方針説明会を実施した。
目玉施策は二つある。クルマの部品点数を大幅に削減できる生産技術「ギガキャスト」を導入することと、次世代電池の開発方針として「27〜28年に全固体電池の実用化」のチャレンジに踏み切ることである。
実は佐藤新社長が掲げたEV戦略は、米国テスラに驚くほどそっくりだ。次ページでは、テスラとの酷似ぶりを図版付きで明らかにする。
果たして、トヨタはEVではるか先を行く王者テスラや中国BYDに追い付き、追い越すことができるのか。自動車業界きっての名物アナリストに、「30年にテスラ逆転」シナリオを検証してもらった。その結果も併せて公開しよう。