トヨタ 史上最強#3Photo:AFP=JIJI

トヨタ自働車グループのデンソーは電気自動車(EV)時代に不足が見込まれる次世代パワー半導体の生産能力を確保するため、“パワー半導体の再編”を自ら仕掛ける案が浮上している。特集『史上最強 トヨタ』の#3では、先行したローム・東芝連合に対抗する「新連合構想」に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

日本のパワー半導体の立役者になれるか
デンソー内部で「再編構想」が浮上

「日本のパワー半導体メーカーは小粒で、外資のガリバーと戦えばひとたまりもない。デンソーがトヨタ自動車グループの資本力を生かして、パワー半導体の業界再編を仕掛けてくれた方が日本の産業界にとっても望ましい」

 ある経済産業省関係者は、同省が主導するパワー半導体の業界再編において、デンソーが台風の目になることを期待する。

 トヨタの電気自動車(EV)シフトが成功するかどうかの鍵を握るのが、EVの駆動を制御するパワー半導体の確保だ。とりわけ、炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体は、現在主流のシリコン(Si)製より電力損失を大幅に低減できる。この次世代パワー半導をめぐっては、世界のEVメーカーが航続距離を延ばして電池容量を減らせるキーパーツとして争奪戦を繰り広げている。

 トヨタでも、3月に発売したレクサスのEV専用モデル「RZ」にデンソー製のSiCパワー半導体を初めて採用した。まさにEVを本格増産するために、SiCパワー半導体の確保が喫緊の課題となっているのだ。

 経産省は、日本のパワー半導体の生き残りを掛けて巨額の補助金で再編を促している。この再編にデンソーが積極的に打って出ようとする構想が浮上していることがわかった。

 次ページでは、パワー半導体業界の再編で、デンソーが打ち上げようとしている「大同団結案」を明らかにする。