インボイス制度に対応するために、早い企業であれば2年ほど前から体制整備を進めてきた。業績に寄与しない面倒な仕事だが、体制整備を乗り越えた企業の中には、想像以上の副次的効果を得ているケースもあるようだ。特集『10月から本番!大混乱必至! インボイス&改正電帳法 最新対策マニュアル』(全16回)の#2では、スポーツ小売専門店最大手のアルペンの例を紹介しよう。
面倒な作業の末に
手にした副次的効果
大企業ともなれば、取引先企業数は最低でも数千社。やりとりする紙の請求書が、年間数万枚に及ぶことは珍しくない。
そんな膨大な請求書支払いや経費精算について、改正電子帳簿保存法およびインボイス制度に対応させる作業を、経理部門の社員が人海戦術で行うのは不可能だ。そのため、インボイス対応を行った企業は、ほぼ例外なく新たなシステムの導入を決定している。
ただし、当然ながらシステムを導入しただけで対応が完了するわけではない。
インボイス制度は社員が日々行う経費精算にも影響するため、取引先と請求書のやりとりをする仕入れや購買部門の社員だけではなく、全社員に対する制度の周知徹底が不可欠だ。
だが、「言うはやすく行うは難し」。企業内でインボイス対応を進める経理や財務部門の担当者からは、「制度がややこしく、それを社内に浸透させるのは本当に難しい」と、国に対する恨み節にも似た声が聞かれる。
それに、骨が折れる作業にもかかわらず、企業には見返りはゼロ。どんなに頑張って社内で対応を進めても、売り上げや利益が増えるわけではないことも、嘆きがやまない理由だろう。
こう聞くと、インボイス対応を投げ出したくなるだろうが、それは踏みとどまってほしい。先んじて対応を進めてきた企業の中には、経営効率化やコスト削減に成功するなど、副次的な効果を得たという実例があるのだ。
まず紹介したいのは、スポーツ小売専門店最大手のアルペンの事例だ。同社では改正電帳法とインボイス制度の対応を進めたことで、財務部の社員を、3万枚にも及ぶ紙の請求書と領収書の処理から解放することに成功した。さらに、その効果は財務部だけではなく、各店舗で顧客と向き合う社員の業務効率化にも及んでいる。
アルペンのケースは、全国に店舗を展開し、多種多様な商品を仕入れる他の小売企業や外食企業に参考になるだろう。次ページで、早速その詳細をお届けする。