インボイスは複雑怪奇。そもそもの消費税の仕組みがわかりにくいのに加え、経過措置や各種特例もあってさらに複雑な制度になる。だが、きちんと理解しなければ、会社も個人も大損しかねない。特集『10月から本番!大混乱必至! インボイス&改正電帳法 最新対策マニュアル』(全16回)の#3では、井ノ上陽一税理士がまとめた「インボイスのよくある勘違い」を基に理解を深めていこう。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
誤解や勘違いだらけの
複雑怪奇なインボイス
消費税が導入されたのは、1989(平成元)年4月のこと。導入からすでに30年超が経過しており、また最も身近な税金といえるが、意外にその中身は知られていない。
ましてや、今回のインボイス制度の導入により、そもそもよく分かっていない消費税のルールがさらに、大きく変わることになるわけだ。多くの人が混乱するのも無理はない。
実際、『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』(ダイヤモンド社刊)など37冊の著書を持ち、You Tubeやブログなどで情報発信を行っている井ノ上陽一税理士のもとには、インボイスに関するさまざまな質問が寄せられるというが、「誤解や勘違いが多いのが実情です」と言う。
例えば、「インボイスに登録しないと損するんですよね!」といったものや「インボイスに登録していない仕入先に対し、消費税分を差し引いて支払ってもいいんですよね」といった具合だ。
前者については「登録しないことで損はしません。ただし、インボイスに登録しないことで取引先から値引き交渉をされたり、取引停止になったりする可能性はゼロではありません」。そして、後者については「インボイスを理由にして消費税10%を差し引くのは法律で禁じられています。あくまで値段交渉が必要ですが、経過措置があるので注意が必要です」と井ノ上税理士は言う。
インボイスについては、こうした誤解や勘違いをしている人が少なくないが、知らないと大損するだけでなく、一歩間違えれば、独占禁止法や下請法などの違反になり得ることから、正しい理解が必要になってくる。
そこで次ページには、井ノ上税理士が21個の「よくある質問&勘違い」をまとめた表を掲載したので、インボイス制度の理解に役立てていただきたい。