ヤマトがアマゾン当日配送から
撤退したのは象徴的だった

 24年4月、物流、建築、医師などに対して年間の残業時間の上限規制が始まる。これに伴い、社会や経済にマイナス影響が及ぶ可能性が高まっている。総称2024年問題では特に、トラック運転手の時間外労働が年960時間に制限される点が重要だ。これにより、的確な時間、場所にモノを運ぶことが難しくなるとの懸念が出ている。

 もともと少子高齢化・人口減少に伴い、トラック運転手の数は減少していた。営業用の大型トラック運転手の平均年齢は上昇し、20年時点で約49歳だという(経済産業省資料、『我が国の物流を取り巻く現状と取組状況』)。

 また、物流業界は中小零細事業者が多い。22年3月末、貨物自動車運送事業者数のうち従業員10人以下の事業者の割合が49.0%、11~20人が22.4%だった。

 一方、ネット通販の利用増などを背景に、物流の需要は急拡大している。国内に限らず、世界全体で物流は成長分野と化した。そうした中で、急成長に追いつかないひずみも表れている。17年、ヤマト運輸がアマゾン当日配送サービスの受託から撤退したのは象徴的だった。

 あれから数年たち、物流業界の事業環境は一段と厳しさを増していて、「人手不足倒産」する物流業者も増えている。東京商工リサーチによると、23年度上半期(4~9月)、運輸業分野での破綻が19件(前年同期比533.3%増)あった。なお、建設業界でも人手不足関連の倒産が増えている。

 24年4月からの規制をきっかけに、時間通りの配送困難だけでなく、人手不足や、賃上げの必要性など、物流業界の課題は深刻化する。2024年問題に対応しようと、医療・医薬品分野では、トラックから鉄道へ輸送手段の切り替えを急ぐ企業も増えている。ドローンを用いた配送体制の整備に向けて、実証実験を行う企業も出始めた。