トヨタ自動車は輸送委託料金の引き上げ
トラック運転手の年収が減らないように

 物流業者自身も対応を急いでいる。コンプライアンス徹底のため、給料を引き上げることで、人材の確保を強化し始めたのだ。求人をネット検索すると、「経験不問」を強調した運転手の求人が数多くヒットする。主婦を対象に求人を出し、週2日程度、軽ワゴンで近隣の配送を行ってもらおうとする事業者もあるようだ。

 大手企業からも支援する動きが出始めた。トヨタ自動車は、輸送の委託料金の引き上げなどによってトラック運転手の年収が減らないように取り組む方針と報じられた。いすゞ自動車は、普通免許での運送を可能にするために、車両総重量3.5トン未満のトラックの供給を予定している。

 それでも人手確保は容易ではない。背景に、わが国の労働市場の流動性が徐々にではあるが、高まり始めたことは大きい。経済全体で、事業運営に必要な人員を確保するために給与を引き上げざるを得ないと気づく経営者は増えた。ドライバーを採用できたとしても、同じ程度の人数が同業他社や、より賃金水準の高い業界に流出するケースも多いと聞く。

 人材の獲得と定着を目指し、事業者は追加的に給与水準を引き上げなければならないが、物流業界全体としての賃上げ余力は十分ではない。繰り返すが物流分野では、中小零細の事業者が多いからだ。

 経営体力が十分ではない事業者は、トラック運転手の時間外労働時間の上限適用によって、需要を取りこぼす恐れが高まる。契約を失い、事業の継続が難しくなるケースはさらに増えるだろう。そうした予想から、24年4月以降の状況を見てから人材の獲得に取り組んだ方がよいと考える事業者もある。

 このように、大手企業を中心に対応は進んでいるものの、物流業界全体として2024年問題に対応することは容易ではない。ガソリンなど燃料価格の上昇も事業者にとって大きな負担となっている。