岸田政権の緊急対応策で足りるのか?
さらなる強化が求められる政府の対策

 2024年問題をきっかけに物流が機能不全に陥ることは何としても避けなければならない。今後、世界経済のデジタル化は加速し、AI(人工知能)の利用は増える。日米欧の産業政策の修正から直接投資が増加している半導体の成長も期待される。先端分野から在来分野まで、物流の機能強化は経済運営に大きく影響する。

 岸田政権は対応策として『物流革新緊急パッケージ』を打ち出した。内容は、(1)物流の効率化(DXの加速)、(2)荷主・消費者の行動変容(ポイント還元を通した「置き配」の誘導など)、(3)商慣行の見直し(荷主・元請事業者の監視体制強化など)――だ。これらは物流の停滞回避に寄与するだろう。

 ただ、(1)~(3)以上に求められているのは、とにかく運転手を増やし、物流業界全体の供給体制を安定拡大させることだろう。そのためにも、賃上げは避けて通れない。大手運送各社は配送運賃を値上げしているが、これは持続的な賃上げを支えるためだ。

 政府は、物流施設への設備投資や、輸送能力の拡大、自動運転の導入支援なども強化すべきだろう。物流分野での新規参入を支援するインセンティブ、税制や支援策を整備することも、2024年問題の克服につながる可能性はある。

 物流の停滞を避けるため、中小零細事業者を支援する枠組みも必要だろう。考えられるのは、人手不足によって事業継続が困難になった事業者に、一定の基準に従って政府系の金融機関などが融資を行うこと。その際、資金提供だけでなく、他社との合併など、より安定した経営を志向できるよう後押しすべきだ。そうしたセーフティーネットの整備も、2024年問題への対応として忘れてはならない。