頭のいい人はノートの作り方が違う。そして良いノートを作ることで、さらに頭が良くなっていく。実は頭の良さと良いノート作りというのは、一方通行ではなく相互に関連し合っているのだ。
頭のいい人たちのノートの作り方を徹底研究し、真似しまくった結果、偏差値35から東大に合格した西岡壱誠氏。10月に発売された『「思考」が整う東大ノート。』は、その西岡氏が研究に研究を重ね、導き出した究極のノート術をまとめたものだ。
実際、頭のいい人たちはこれらのノート術をどのように応用しているのか。現役東大生たち3人のノートを見せてもらい、西岡氏が分析。そして私たちの仕事や勉強への取り入れ方も解説してもらった。(取材・構成:山本奈緒子)
頭がいい人のノートに共通する3つの方法
まず基本情報として、西岡氏のノートの作り方には、大きく次の3つの方法がある。
2.インプットノート:記憶・暗記を目的としたノートの作り方。いろいろなものを覚えなければならないときに有効。
3.アウトプットノート:理解、定着を目的としたノートの作り方。情報を自分の中でしっかり定着させたいと思っている人に有効。
ここからさらに細かく、ノートの作り方術が派生していく。それは、東大生たちの実際のノートとともに学んでいこう。
ノートは見返さない
ただ自分の理解度を深めるためだけに作る
布施川天馬さん
東京大学文科二類合格、現在は文学部人文学科に在学。予備校に通う経済的余裕がなかったため、「お金も時間も節約する勉強法」を編み出し東大に合格。『東大大全 すべての受験生が東大を目指せる勉強テクニック』など著書も多数ある。
ノートは自分の理解のためだけに作る
大学の「語学演習」クラスのまとめノート。左側に単語、その下に日本語訳、右側に解説などを書いているが、実はノートを見返すことはほぼしないという。あくまで書きながら自分が記憶することを目的としているので、自分が理解できなかったことや面白いと思ったことなども、規則性なく書き込んでいる。
膨大な授業情報から、自分にとって大事な情報だけを取り出し、整理して書き込んでいます。これは、すでに頭の中で情報が整理され定着しているから作ることができるノート。そういう意味では、記憶の定着や理解を強化するアウトプットノートと言えます。一方で、色分けが全くなく、あちこちに自分が覚えておきたいことをメモしているところは、記憶することのみを目的としたインプットノート的要素も。後から見返すことを目的としていなければ、このようにアウトプットノート術とインプットノート術をミックスさせることは有効です。
イラストを有効活用する
同じく大学の「語学演習」クラスのまとめノート。先生の言ったことや教科書の内容をそのまま書いているのではなく、自分の頭の中でまとめ直して書いている。よって、書かれている具体例などは自分が考えたもの。このノート作りの目的は2つあり、1つは書きながら情報を整理し理解度を深めること。そしてもう1つは、「理解できているなら自分で分かりやすくまとめられるはず」という確認作業でもあるという。
これはお手本のようなアウトプットノートとも言えます。アウトプットノート作りの最大の目的は、“分かる”から“できる”に変換すること。これを私は「サマリールール」、つまり「言い換える行為」という言い方をしています。その言い換えの方法は3つあります。
①本質を要約する
たとえばひと言で言うと何なのかを考え、そのひと言を使いながら100~140字程度で要約してみる。
②漢字2文字で表す
与えられた情報を2文字に変換することで、理解度が深まるとともに、単純に覚えることが減る。このように“情報を畳む”ことは記憶や理解を深めるうえでとても効率的。
③デザイン的に表す
もっと小さく“情報を畳む”ためには、言葉で表現せすに、「→」や「〇」などデザインで表現するのもオススメ。実際、布施川さんのノートは矢印や中括弧などデザインが多用されている。
Q&Aに言い換えてみる
先生の説明を聞いていて「なんで?」と思ったため、その「なんで?」を「Q」にし、先生の言ったことを「A(アンサー)」にしてノートにまとめている。
この「Q&A」への言い換えは、非常に有効なインプットノート術です。教えられた情報に対して「なんで?」と思うのは、その情報の裏側にあるもの、あるいは意図が分からないから。「Q」を作ることで、「そういう意図だったのか」「そういう背景があったのか」と理解が深まり、「A」の情報がより覚えやすくなります。また「A」を忘れてしまっても、「Q」を覚えていれば「A」を思い出しやすい、という利点もあります。
インプットの質を高めるノート作り
真っ白なルーズリーフなどを1枚置き、一つの単語を起点に、関連することをどんどん書いていく。一種の連想ゲーム的なノート術だ。言葉がつながっていかないとしたらそれは知識が抜けていることを示しているので、そこを調べるようにしていた。受験の最終段階でよくおこなっていたノート術で、毎回、1ページが言葉で真っ黒に埋まるまで書いていたという。
これは、アウトプットを前提にしたインプットノート作りと言えます。布施川さんは、一つの単語から連想ゲーム的に様々な言葉を書いていますが、私の場合は、その日学んだことを、何も見ずに自分の記憶を頼りに書き起こしてみる、ということをやっていました。これを続けていると、次第に「アウトプットすることを前提にインプットする」ようになり、インプットの質が良くなっていきます。ノートというのは出来上がったものよりも、このように作るその過程にこそ意味があるのです。
▽その他の東大生のノート記事はこちら