とはいえ、日本とアメリカで合計2500万人ぐらいの人たち(編集部注:2023年6月期第1四半期決算においてはマーケットプレイス(メルカリ)で2075万人、FinTech(メルペイなど)で1394万人)が使ってくれているし、達成できたことに対しては誇りを持つべきであるとは思っています。
今回、10周年を迎えるにあたって、ミッションを変えます。
「テクノロジーを使ったら、もっと人の可能性が広がるんじゃないか」ということが言語化できて、すごくこれからが楽しみです。やれることは増えているし、これからものすごいオポチュニティ(機会)がある。そういう意味で、大きな「何十年か先に達成すればいい」というミッションを掲げて、そこに向かって着実に前進していっている感じはあります。
だから達成感がないわけでもないし、かといって、これで満足したというわけでもなく、これからまた、やっていこうとあらためて思っています。
──この10年でメルカリのサービスが何か世の中を変えられたという手応えはありますか。
そうですね。世の中で、と考えると「循環型社会」という話になっていきますが……。
メルカリ設立前、僕は世界一周の旅行をしました。そして日本に帰ってきたらスマートフォンが普及していて、フリマアプリの「Fril(フリル。現・楽天ラクマ)」や「ヤフオク!」などがいろいろ出てきていました。これまでPCの時代はどうしてもパソコンを所有する人が限られていましたが、スマートフォンは1人1台持つので、その時代に向けて、個人が簡単に物を売ったり買ったりできるようにしようという思いがそのときにありました。
売るということの喜びや楽しさ、人の役に立っているという感覚や、買う人の「安く買えた」という満足だけでなく、使えるものを大切にしようとか「こうあるべき」というところまで含めて、1人1人の人間の感情や根源的な欲求のようなものを刺激するようなサービスができるんじゃないかと思いました。
それを利用するのがデイワン(編集注:サービス開始時期の意味)のときには10人、20人だったのが、気づけばすごくたくさん、何千万人となって拡大した、といった感じです。
そういう場を作れたことに関しては、すごくよかったと思います。循環型社会とかマーケットプレイスとかテックの会社だとか、メルカリに対していろいろな見方があるかもしれませんが、結果として、そういう1人1人の体験を大きな基軸と考えて、それをたくさん広げられたのがよかったのではと思っています。