もしかしたら、そこからもう大きくしないで「僕の会社」にするという道もあったのかもしれません。ですが、この会社はもっともっとポテンシャルがある。社会の中であつれきを生むのではなく、循環型社会の一部になれる。それを実現するために自分も努力しよう。外国人も含めていろいろな人が集まって、優秀な人がたくさんいる中で、会社としてもやれることを追求していく、そういう組織にしたいと思いました。

上場するに当たっての金融庁などとの話し合いも含め、この会社を永続的に成長させたいと思うようになりました。もちろん最初から志向はしてたんですが、自分ではあまり思考が追いついていなくて、だんだん変わっていったという感覚ですね。

創業10年を迎えたメルカリ・山田氏が語る過去と未来──「まだ満足はしていない、これからが楽しみ」

いろんな経験が偶然「Connecting The Dots」してここに至る

──先ほどフリル、ヤフオク!の名前が出ましたが、競合やベンチマークしているサービスも変わってきているのではないでしょうか。

きれいごとを言いたいわけではないんですが、どこが「競合」というよりは、僕はサービスもサービスじゃないものも、いろいろ見たり使ったりするのが好きなんです。おなじ領域のサービスだけでなく、ゲームでもコミュニティでも動画のサービスでも、みんなが面白く便利だと思って使い続けている理由を、どうやったらサービスに取り入れられるかを考えます。

また、今は(メルカリが)2000人ぐらいに成長しました。なので、組織やガバナンスについて考えます。数千人や数万人の会社でどうやって経営されているのか、どうやったら自分たちの組織に取り入れられるかと。「あの会社のこういうところはいいよね、でもそれはうちの会社に合ってるんだっけ」ということも当然あります。例えばシリコンバレーのビッグテックはすごいけど、そのやり方を日本にそのまま導入できるかというと、そういうわけじゃない。

全世界からタレントを採れるようにしよう、いいところはちゃんと取り入れようと思って動いていますが、どこかを意識してコピーしようとか、やっつけてやろうと思ったことはないです。

マーケットを考えれば当然、ネットワーク効果もあるので「Winner Takes All(勝者総取り)」みたいなところもあるかもしれません。ですが、「フリルは女性向け」、「ヤフオク!」はガジェットやコレクタブルなものといったように、当時から強い領域も全然違っていました。だからそれぞれのサービスを分解して見て、いいところは取り入れようと思ってやっていたら、いつの間にか今のメルカリになったという感じです。競合の機能の大部分をまねしようとか、何とかして圧倒しようとかいう考えはなかったです。