1つ目は、いよいよ日本のスタートアップ業界が「村」から「街」になってきたということです。私が2012年に起業した頃は、スタートアップという言葉もありませんでしたし、起業といえばアングラ感があるというか、キャリアプランとしてまったくメジャーな選択肢ではありませんでした。そんな状況からこの10年で本当に多くの方がスタートアップ業界に入ってきたと感じています。業界が活性化し、大きくなることは大変嬉しく感じていますが、一方で今回のような大きなご期待をいただくということに対して、一定の責任も発生するとも考えられます。スタートアップ業界の末席にいるものとして、襟を正して頑張っていきたいなと感じています。

2つ目は、「予算配分」についてです。今回打ち出された“スタートアップへの投資額を年間10兆円規模にする”という指針は前述の通り素晴らしいなと感じていますが、どこに予算を投じるのかが重要です。私としては、この10年で起業家支援の体制は事業会社・金融機関のみならず地方自治体においてもかなり整備された印象で、起業後の資金支援も拡充しています。おそらく日本のスタートアップを次のステージに引き上げるために必要なことは、大きなエグジットをたくさん生み出す環境整備であると感じています。具体的にはレイターステージからポストIPOステージで活動できるVCファンドの増加です。大きいIPOを生み出すためには、レイターステージでの資金調達の選択肢が豊富でなければなりません。ここに一定の予算を割り振られるのであれば、日本から大型の上場企業を数多く輩出できるようになり、世界中の投資家からも注目されるようになる可能性もあると考えています。

今回発表された内容には、本気で国がスタートアップに力を入れるんだという強い意志を感じました。是非とも実現いただき、世界と戦えるスタートアップを多数輩出できる環境を一緒に作っていきたいと思います。

XTech Ventures 代表パートナー 手嶋浩己

日本の経済成長や底力を上げていくためにスタートアップやスタートアップ的な仕組みを生かしていかないといけない、というのはその通りだと思いますし、微力ながら一翼を担っていると自覚して活動していきたいと思います。個人的には、6年くらいで辞めてしまいましたが私も大企業(博報堂)出身で、大企業からの優秀な人材の流動性を高めることにはミッションを持って取り組んでいきたいと思います。

もちろん社会には、大企業をけん引しながら社会貢献をしていく役割が必須ですが、堅牢な事業モデルができている中で一部が社外流出してもびくともしないと考えています。全体として人材流動性が一定程度高まる仕組みやインセンティブの設計、啓蒙をしていければと思います。