グループ会社の社長と仲よくなれば、次のM&A先を紹介してもらえるようにもなります。最近はM&Aのソーシングをエージェントにもお願いしていますが、初期はほぼリファラルでした。「SHIFTグループにいると楽しい」と心から思ってくれた社長は、友達を紹介してくれます。そうすると、どんどん自分たちの能力を超えたソーシングができるようになっていく。そっちのほうが絶対いいのではないでしょうか。
及川:丹下さんは、M&Aの交渉過程でもかなり早くから社長同士での面談をされます。やったほうが絶対に好印象を与えると思いますが、それができる会社は少ないと思います。PMIの話に戻って、グループ会社とのコミュニケーションはどのくらいの頻度で取っていますか。
丹下:先方の規模や経営レベルによって、必要なコミュニケーションの密度も違うので、3グループに分けて管理しています。Aグループはそれなりの規模感があって、SHIFTのアセットを一番活用できるグループ。このグループとのミーティングは月1くらい。Bグループは、規模は大きくないけれどもひとり立ちができているグループで、ここだと3カ月に1回くらいかな。Cグループはまだまだ手厚くフォローしたほうがいいグループで、ここはもう毎週数字を確認しています。
SHIFTの場合、PMIの主役はあくまでグループ会社の経営陣で、要は彼らの意識がどう変わっていくか。先方がSHIFTのやり方を本気で採り入れたいと思ってくれた瞬間から、どんどん伸びていきますよ。ただ、それには本人たちの心の準備が必要な場合もあります。
2022年にSHIFTグロース・キャピタルを設立した理由の1つもそこにあります。もちろん、最も大きな理由は取締役会のタイミングを待たずに、スピーディに意思決定できる仕組みをつくるためですが。M&Aで大手SIerと戦っていくためには、スピード感は不可欠です。
もう1つの理由が、先ほど言った「心の準備」をしてもらうための“箱”としての機能を持たせること。グロース・キャピタルのM&A先には、比較的自由な経営を続けてもらいつつ、SHIFT本体のPMIのやり方を外から眺めてもらえばいいと思っています。
そのときに、「こういうやり方をするのか。うちはまだそこまで管理されたくないな」と感じる人たちもいれば、「これだけ急成長できるなら、自分たちも同じようにやってみたい」と思ってくれる人たちもいる。後者であれば、あらためてSHIFT本体のグループ会社になってもらうことも検討していきます。