昔は「スーパーマーケット」に間違われていた“黒子”ぶり

──まず、ブランディングを強化することにした理由を教えてください。

北澤:起業家のいちばん近くに寄り添い、起業家の志を実現するためのサポートしていく──ジャフコが設立当初から掲げている思いに変わりはありません。しかし、昔と比べると起業家を取り巻く環境も変化しているほか、大企業がCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を立ち上げるなど、ベンチャー市場も成熟化してきています。

そうした環境の中、より大きな事業をつくっていくために起業家にとって大事なのは「誰に投資してもらうか」です。そう考えたとき、起業家に自分たちはどういう会社で、どんな人がいるのかをきちんと知ってもらわないと、お互いにとって良い組み方ができません。

それで自分たちのことを適切に表現するためにブランディングを強化することにしました。実際、これまでに「具体的にジャフコは何をしている会社なのか見えてこない」と言われるような課題もありました。そこで良い機会だと思い、ジャフコがどういう起業家とお付き合いしていて、過去にどんなことをしてきたのか、を発信するためにオウンドメディアも立ち上げました。

藤井:過去には(2008〜2009年の)リーマン・ショックで有望と見込んだ企業に資金を集中する“厳選集中投資”に切り替えるなど、投資戦略の変更もありました。ただ、ジャフコの基本的な思いは北澤が話した通りで、それは今も変わらず脈々と受け継がれています。

また、ジャフコで働く人たちは「投資先が上手くいったら、それは起業家が頑張ったおかげである」ということを昔から先輩に口酸っぱく教えてこまれていました。ともすれば、投資先が上場するなど成功事例が生まれれば「私たちが支援しました」とPRするのは世の中的には良いかもしれないですが、ジャフコには“黒子”の意識が強くあります。ですから、これまでは表に出ることなくあくまで黒子として起業家を支援し続けてきました。

ただ、ずっと黒子であり続けることで私たちの考えや伝えたい思いがきちんと伝わらず、外からは“謎の集団”に見えてしまうかもしれない。昔はVCのことを知らない人が多く、私たちが企業に連絡しても、スーパーマーケットに間違えられることも多くありましたが(編集部注:似た名称の「ジャスコ(現:イオン)」に間違えられることが多々あったという)、今はプレーヤーも増えていて、VCのことを知っている人もたくさんいます。そうした時代においてジャフコはVCとして何ができるのか、どういう人たちなのかを伝えていかないといけません。