――売り上げは伸び、継続利用率も高いですが、6期連続での赤字です。

 黒字化自体は難しくないと考えており、今期は黒字化を見込んでいます。セグメント別に見れば、Sansan事業は広告費に20億円ほど使っていますが、すでに黒字化しており、営業利益は前期比102.4%増で成長しています。Eightも宣伝への大規模な資本投下は昨年で終了しており、売上高は102.8%の成長です。今期からは収益化を目指します。

 現状は無理にでも利益を出すよりも、事業成長のためにしっかり資本を投下すべきフェーズだと捉えています。これからは成長に必要な投資をしつつ、しっかり数字も出すつもりです。

Sansan経済圏確立に向け、M&Aも視野に

――Sansan、Eightに続く新たな事業の柱の予定は。

 当面はSansanとEightの2本柱になるはずです。新規事業の開発はデータサイエンティストチーム「DSOC(Data Strategy & Operation Center)」で進めていますが、それらは結果的にSansanやEightの新機能になっています。

 例えば、名刺の認識精度向上。Sansanのサービスを始めた頃は顧客から預かった名刺をスキャンしても正しく読み取れず、ほぼ全ての情報をスタッフが手打ちで入力していました。現在は独自の画像認識技術によって、かなりの作業を自動化しています。

 すでに(他社のMAツールなどと)データを統合・リッチ化する「顧客データHub」を追加価格で提供していますが、このような形で今後もニーズに沿った機能を追加するつもりです。Sansanをプラットフォームのハブにしつつ、蓄積したデータをよりさまざまな形で利用できるようにしたい。

――Sansanを中心とした経済圏を作る際には、他社のM&Aも視野に入れているのでしょうか。

 Sansanとの親和性が高いサービスを手掛ける企業のパートナー化、あるいはその延長線上としてのM&Aは常に選択肢として検討しています。

 4月には法人向けアンケートツールを開発するクリエイティブサーベイに2億円の出資をしました。名刺のデータベースを活用してアンケートを取るなど、Sansanの派生サービスになる可能性も十分あります。これからも顧客のビジネスをより豊かにできるサービスを支援していきます。

――地方拠点も複数立ち上げています。特に徳島県神山町では、オフィスを立ち上げただけでなく、個人でも高専を設立する「神山まるごと高専」プロジェクトの発起人になるなど、活動が盛んです。