三菱商事がKDDIに目を付けたワケ
今後、KDDIによるTOB成立を経て、ローソンは非公開化される。ローソンは、多種多様な株主の意向に配慮する必要がなくなる。ローソンの改革は加速するだろう。
注目すべきは、コンビニ事業と三菱商事の持つ総合商社の機能、KDDIの情報通信の機能が付加されることで、ローソンが日本版アマゾンドットコムのような複合企業を目指す展開だ。成功すれば、わが国において初の企業体になるだろう。
アマゾンドットコムは、グローバルな物流体制、情報通信技術、商品計画などの面で競争力を高め、世界有数のITプラットフォーマーに成長した。近年は新しい収益源を拡充するべく、衛星を用いた情報通信事業の強化に積極的だ。
23年10月、同社は試験衛星の打ち上げに成功した。29年までに3200以上の衛星を打ち上げ、世界規模の高速通信サービスを提供する計画「プロジェクト・カイパー」を進めている。狙いは、世界の消費者が必要とする、あらゆるモノとサービス(動画視聴やクラウド、生成AIなどを含む)の供給体制を構築することだ。
翻って三菱商事は、消費者の欲するモノやサービスの需要と供給をマッチさせる力は高い。物流機能の強化も、総合商社の得意とするところだ。問題は、どのように次世代情報通信面での競争力をグローバルに高めるかである。この点は、他の企業の専門性を取り込まなければならない。
この足りないピースを埋めるため、協働を呼びかけたのがKDDIだった。KDDIは21年、衛星通信サービスのスターリンクを提供する米スペースX(テスラのイーロン・マスク氏が経営トップの企業)と提携している。24年に入ってからは、国内で個人向けにスターリンクを販売するとも発表した。山間部や海上などでも高速ネット通信が可能になる。
三菱商事とKDDIは最先端の情報通信技術を駆使してコンビニ利用者との接点を増やし、より効率的な付加価値創出を目指すという。まさにローソンは、日本版アマゾンとしての成長を目指し始めた。