アジア・新興国への国際展開強化も期待

 さらに三菱商事とKDDIは、ローソンの国際展開も強化するはずだ。世界市場におけるローソンの出店数は頭打ちとなっているが、非公開化をきっかけに再度、アジア諸国など成長期待の高い市場で業務拡大に取り組むことになりそうだ。

 海外戦略の強化によりローソンの業態変化の可能性も高まる。コンビニだけでなく、ネット通販、教育やエンターテインメント、銀行などの金融サービス、医療(オンライン診療)など包括的なサービスをネット上で完結させる業態変化だ。コンビニはリアルとネットの接点のような存在と化すだろう。

 この点でも米アマゾンはモデルケースとなる。アマゾンは一時期、ロボット掃除機「ルンバ」を開発した米アイロボットの買収を目指していた(EU規制当局の承認が得られず断念)。生成AIの普及で世界全体のIoTが加速する展開を見据え、ルンバを家庭向けの生成AIデバイスとして活用する狙いがあった。

 三菱商事とKDDIも、そのような大局観をもってローソンの国際展開を目指すべきだ。ローソンには今後、これまでわが国ではあまり見られなかった戦略を実現してほしい。例えば、ローソンの経営に家電メーカーが参画する、海外のIT関連企業と業務面で提携する、世界的な情報通信プロバイダーがローソン経由で高速移動通信サービスを販売する、などだ。

 今回の共同経営は、従来の企業グループや業界の垣根を超えたアライアンスが拡大するきっかけになるはずだ。少なくとも、流通業界の常識は大きく変わろうとしている。小売りと情報通信、メーカーと商社などの提携加速、それによる新しい分野のビジネスへの取り組みにつながることを期待したい。

「日本版アマゾン」が誕生?KDDI×ローソン×三菱商事TOBの“真の狙い”を考えるローソンの業態変化の可能性も高まる。コンビニだけでなく、ネット通販、教育やエンターテインメント、金融サービス、医療など包括的なサービスをネット上で完結させる業態変化だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA