成田氏と、彼を批判するSNSに
共通する「邪魔者は消えろ」という考え

 成田氏の「集団自決発言」というのは、ざっくりとした言い方をすると、日本の未来を守るためには高齢者は「邪魔」なので、若い人たちのためにさっさと社会から退場してもらうべきだというものだ。

 一方、今回、SNSで成田氏の広告起用を批判している人たちの主張は、あらゆる人の人権が守られる社会を築くためには、成田氏のような人権軽視をする人は「邪魔」なので、社会の表舞台からすみやかに強制退場させるべきだ、というものだ。

「集団自決」とか「人権」とかという言葉が出てくるので、なんとなく真逆のことを言っているような錯覚に陥るが、本質的な部分では実はどちらも言っていることは同じだ。それは「日本のためには邪魔者は消えろ」――。つまり、「高齢者の集団自決」も「SNSの不適切狩り」も、「社会に迷惑をかける個人は抹殺してよろしい」という全体主義的な排除の思想が根底にあるのだ。

「自分で成田氏の発言を批判していたくせに、それを棚に上げて勝手なことを言うな!」というお叱りが飛んできそうだが、筆者が批判していたのはあくまで成田氏の「集団自決発言」であって、「経済学者・成田悠輔」という個人ではない。

 もっと言ってしまうと、そもそも筆者があの発言を批判したのは、先ほど申し上げた全体主義的な排除の思想が垣間見えたので、それ社会に広まっていく前に、カウンターを打ちたかったということが大きい。

 先ほど紹介したダイヤモンド・オンラインの記事を読んでいただければわかるが、筆者が成田氏の「集団自決発言」を問題視した最大の理由は、歴史の教訓だ。