半導体市況の活況で、各社は人材獲得競争に躍起になっている。中でも高待遇で人を集めているのが製造装置業界。東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテックなどの平均年収は20年で2倍に増え1300万円を超える。あまりの人手不足で半導体業界未経験者や60代シニアにまで声を掛ける企業も増えてきた。一方で台湾TSMCの熊本進出で話題の外資系企業やデバイス業界では違う様相も見えてきた。特集『高成長&高年収! 半導体160社図鑑』の#2では、優勝劣敗が激しい半導体業界の給料模様を大解剖する。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
トップ3社は平均年収1300万円超え!
半導体人材市場に20年ぶりに来た「夏」の時代
理系学生や理系人材の就職先として、半導体業界は長らく「見捨てられた」業界だった。かつて半導体世界トップだった総合電機が軒並み半導体事業を切り離したり事業撤退したりしてきたからだ。
その結果、国内のデバイス企業で最先端の微細化技術や量産を手掛ける企業はほぼなくなった。東芝から分離したNAND型フラッシュメモリーのキオクシア、CMOSイメージセンサーを手掛けるソニーグループを除いて、現在国内に残る半導体メーカーは生産を自社で行わないか、行うとしても小規模にとどまってしまっている。半導体関連の特に製造にまつわる仕事をしたければ半導体製造装置メーカーへの就職を目指すしかない、という時代が長く続いてきたのだ。
しかし、台湾TSMCの熊本誘致や、札幌での国策半導体会社ラピダスの設立、さらに国を挙げた半導体産業への巨額補助金の投入を経て、その流れは大きく変わりつつある。
「求人数は2018年に比べると3.5倍に増えた。そしてどの企業も100%の充足率には至っておらず、良い人材は複数の企業が取り合う状況となっている」と、転職エージェントJACリクルートメントの宮岸拓哉エンタープライズディビジョン半導体チームマネージャーは明かす。
最近20年ほどは各社とも採用を控えていたこともあり、中核となる30代の半導体エンジニアの層が極端に薄い状態にある。そこで「半導体の経験が長い人なら、50代や60代でも採用されている。また、大学時代に物理などを専攻していた理系の若手未経験者や、Python(アプリケーションの開発、人工知能、データ解析などさまざまな用途に使用できるプログラミング言語)が書けてEDA(半導体や電子機器の設計作業をコンピューターで行うツール)が使える人なら、異業種未経験の採用も増えている」(宮岸氏)。まさに引く手あまたの状態で、半導体業界全体が「製造業セクターの中でも給料の高い部門になっている」(春野直之・JACリクルートメント エンタープライズディビジョン部長)というのだ。
半導体業界にとっては、20年ぶりに来た「夏」の時代である。だが、実は企業や、デバイス・装置・素材などの分野ごとに詳しく見ていくと、そこにはかなりの格差もあるようだ。さらに、米エヌビディアやTSMC、ラピダスなど今話題の企業の転職・給料事情はどうなっているのか。日本企業、外資企業を含めて、具体的な役職、年収額と共に、次ページから詳しく見ていこう。