「餃子宴」に「麺料理」
食の楽しみもいっぱい

25色、形、大きさと味のバリエーション豊かな餃子の宴
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 西安には「三絶」と呼ばれる地元料理があるそうで、唐風料理「倣唐宴」、中華バーガーとも言える「牛羊肉泡饃」、そしてここでご紹介する「餃子宴」です。創建1936年の老舗「徳発長」でいただく餃子宴は、まずはそれだけでも十分お腹いっぱいになる量の前菜に続いて、蒸籠で蒸した餃子が次から次へと13種類運ばれてきます。

 もともと餃子は北京よりさらに北方で好まれる主食で、春節と元宵節と冬至に食べる縁起のよい食べ物でもあります。西安の餃子宴はこの伝統の食べ物に工夫を重ね、独自の食文化へと発展させています。

 画像をご覧いただくと、それぞれが独特な色と形で、なかには何かを模している餃子があるのもおわかりいただけるでしょう。概ね、似せて作られたものと包まれている具材は同じですが、カエルの姿を模した餃子(画像2段目右からふたつめ)の中身はカエル肉ではありませんのでご安心を。

 餃子宴を最後に締めるのは、かの西太后が好んだと伝えられる「真珠餃子」の「太後火鍋」です。清朝末期に起きた義和団の乱の際、西安まで逃げてきた西太后がなにかちょっとおいしいもの食べさせなさいよ、いい感じに工夫してある珍しいやつ、と逃げてきたわりにいつもの調子でおっしゃるムチャ振りに応じた料理人が考案したそうです。

 当時は餃子の餡に使うのは豚、羊、牛の肉と野菜だけだった伝統を覆し、鶏肉の餡を鶏スープで煮るという新機軸を採用したこの餃子は、テーブルに用意された鍋に、小指の先くらいのとても小さな餃子(世界一小さいという触れ込み:画像最下段右からふたつめ)を投入してその場で煮込みます。

 これを適当によそっていただくのですが(画像最下段右端)、スープが濁っているので、真珠餃子が均等に分けられているかどうかは気にせずにじゃんじゃんよそいます。

 自分のお椀に偶然入った真珠餃子の数はいくつなのかを食べるときに数え、その数によって運勢を占うという、食べるだけではないエンターテインメント性が備わった楽しさも特徴です。数がいくつであっても基本的によい運勢ばかりで、ひとつも入っていないときでさえ前向きな結果を得られるのだとか。

 西安の食事には、餃子宴での運試しをぜひご検討ください。

徳発長
所在地:西安市蓮湖区西大街 鐘楼店
時 間:10:00~22:00
26「麺」の簡体字は「面」なので、とてもバランスの偏った表記に
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 小麦食文化の陝西省では麺料理も豊富です。なかでも見た目の独特さと、その怪しい漢字表記に特徴のあるビャンビャン麺は、ここ5年くらいの間に日本でもじわじわと認知度を高めてきている気配なので、ご存知の方もおいででしょう。

 小麦粉に水と塩というシンプルな材料でできている幅広で長い手延麺。秦始皇陵博物院の商店街にこの看板を掲げた店が複数ありましたが入る機会を得られず、陝西省の伝統料理を出す店でお目にかかることができました。

 この土地の不思議を説く「陝西八大怪」の一番目に挙げられているのがビャンビャン麺で、「(陝西省の)麺はベルトみたい」と紹介されています。

 「ビャンビャン」という名前の由来は、筆者は延ばすときの音だと聞きましたが、ほかにもいくつか説があるようです。画数58の「ビャン」は画像のとおりの文字で、一度見たら決して忘れませんが、一度見ただけではおそらく書けないのが特徴です。この機会に覚えておくともしかしたら何かのときに役に立つかもしれません。

 画像の鉢は14人分で、サイズ感は抱えている手や後ろに並ぶビールの大瓶からお察しください。

 味付けは唐辛子、刻んだネギに花椒、酢と醤油と塩と熱した油。これらを麺とよく混ぜ合わせていただきます。色味からご想像いただけるとおりの辛旨。箸が進みます。取り分けやすいように切ってありましたが、それでも持ち上げるとこの長さ。満足感の高い一品でした。

長安灶 陝菜伝承店
所在地:西安市碑林区南門内永寧里2階
27中華バーガーの肉夾饃(ロージャーモー:中央下の左)はぜひ!
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 せっかく海外に来ているのですから、地元の人が日常使いしている場所にも行ってみたくなるのが旅人の人情というもの。買い物ならスーパーマーケットや市場などが楽しいですし、飲食ならやっぱり屋台街を見逃せません。

 画像の屋台街は、西安城壁より南に広がる高新技術開発区の一角です。集合住宅の立ち並ぶなかに数百メートルに及ぶ露店が並んでいました。泊まった宿で尋ねて教えていただいた場所です。
アルコールの用意がない店では、近くの売っているところで買ってきた飲み物を持ち込んでも叱られません。支払いはほとんどの店でキャッシュレス決済になっています。

 昔と違って中国の屋台営業許可は衛生管理基準が厳しくなっていて、みなさんが想像なさるよりずいぶん清潔です。この手の店を苦手にしてらっしゃらない方は、地元密着型グルメにも果敢に挑戦してみてください。

屋台街
所在地:宿泊している宿のレセプションなどに相談して探しましょう
時 間:夕刻からまあまあ遅い時間まで
料 金:10元前後~
※支払いは現金のほかAliPayやWeChatPayなど二次元コード決済可

 ここで紹介した見どころ以外にも、華清宮や法門寺、太白山などなど足を運びたい見どころがまだまだたくさん揃っている西安をじっくり楽しみましょう。

※本記事は、2024年7月4日現在のものです。