海底ケーブルがつながる先として重要度が高まっているのは世界各地のデータセンターだ。商機をうかがう企業も多い中、三菱商事はアマゾン・ドット・コムやマイクロソフト、グーグルといった米IT大手などの“巨大顧客”に特化したデータセンター事業で着実に成長を続けている。なぜ三菱商事はクラウド3強と共存共栄できるのか。特集『日本経済の命運決める 海底ケーブル大戦』(全7回)の#6では、三菱商事のデータセンター事業の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
2022年は2兆円を超える国内データセンター市場
三菱商事は「ハイパースケーラー」に特化
海底ケーブル建設ラッシュの背景にあるのは、データセンター需要の高まりだ。
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で、企業活動のデジタル化は一気に加速。クラウドのニーズも高まり、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグルの米クラウド3強は世界各地でデータセンターへの投資を加速する。このデータセンターをつなぐため、海底ケーブルの建設を推し進めているのだ。
来日したグーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は9月7日、日本でデータセンターや海底ケーブルなど総額1000億円の投資を2024年までに行う方針を示した。
岸田政権が進める「デジタル田園都市国家構想基本方針」でも、日本を周回する海底ケーブルの建設は、地方のデータセンターの新設とセットだ(本特集#1『【スクープ】NTTドコモが「日本一周」海底ケーブル国策プロジェクトに名乗りを上げる理由』参照)。
調査会社IDCジャパンによれば、22年の国内データセンターサービスの市場規模は前年比15.3%増の2兆0275億円と、初めて2兆円を超える見通しだ。今後も12.8%と高い年平均成長率が維持され、26年の市場規模は約3.2兆円に達すると予想されている。
こうした中、三菱商事は17年にデータセンター世界最大手の米デジタル・リアルティと合弁会社MCデジタル・リアルティ(MCDR)を設立し、データセンター事業に本格参入。以降、年平均成長率40%と業界を上回る伸びを見せている。
「顧客の約9割は『ハイパースケーラー』だ。戦略的に狙い、仮説通りに顧客を獲得できている。ハイパースケーラー向けのシェアはトップクラスだ」とMCDRの手塚万峰社長は自信を見せる。
ハイパースケーラーとはデータセンターを大量に使う“超大口”顧客のことだ。手塚社長は企業名について明言を避けるものの、クラウド3強など世界でも一握りの企業のことを指す。
クラウド3強は自前でもデータセンターの建設を推し進めるが、なぜ三菱商事はクラウド3強などの巨大顧客を獲得できたのか。次ページでは、ハイパースケーラーに特化し、クラウド3強との“共存共栄”を実現した三菱商事の戦略に迫る。