「小売の社長はみんな在庫に悩んでる」外販を決めた妻の言葉
こうした苦労の末に生まれた「FULL KAITEN」は、AIを用いた予測・分析で適正在庫を維持し、粗利の向上を目指すサービスだ。販売実績などから需要を予測し、適切な発注数を提案。また、販売が伸び悩んでいる商品の値下げや販促の効果をシミュレーションし、最適な販売戦略を導き出す。
開発当初は社内で使うことを想定したシステムだった。外販を決めたのは、苦楽をともにした妻の「在庫は小売の社長ならみんな悩んでる。本当に人の役に立ちたいなら、このシステムを他社も使えるようにすべき」という言葉がきっかけだったという。人を幸せにしたくて一度はITから距離をおいた瀬川さん。でも、ITだからこそ顧客の課題を抜本的に解決し、笑顔にできることがあるのだと考えるようになった。
「FULL KAITEN」は今、小売を中心に200以上のブランドに導入されている。ある家電量販店は、欠品率を50%削減。あるアパレル企業は、在庫高1億円減、粗利率13%増を実現したという。また、あるスポーツ用品企業では、「FULL KAITEN」の分析結果を信じて値引きを抑制し、一定期間内の粗利率が0.7%向上したという。他にも、粗利率が1%上昇した例は多数出ているそうだ。
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次のステップとして、フルカイテンでは今、ある研究開発を進めている。「FULL KAITEN」に蓄積された流通総額1兆3000億円超の膨大なデータからトレンドを可視化し、需要予測や販売戦略に役立てられないかというのだ。同社が目指すのは、企業や国の垣根を超えた世界の在庫最適化だ。「もともと力がある商品は、きちんと販促すれば売れる。皆さんが想像する以上に、滞留在庫は宝の山なのです」(瀬川さん)