「Go Toトラベル実施は官房長官在任中、最も難しい判断の一つだった」菅義偉が打ち明けるコロナ対策の舞台裏課題はコロナ対策と経済再開の両立だった。写真はマスク着用で会議に臨む筆者(2020年3月31日撮影) Photo:JIJI

新型コロナウイルスの感染拡大は、マスク不足や経済活動の停滞などさまざまな混乱をもたらした。その対応には、時に強い政治的決意が必要なこともあった。前回に引き続き、今回もコロナ禍の対応を振り返ってみたい。(肩書は当時のもの)(第99代内閣総理大臣/衆議院議員 菅 義偉)

深刻化するマスク不足に
縦割り打破で対応

 新型コロナウイルス感染拡大とともに発生したのがマスク不足であった。国内需要の急増、業者による買い占めと転売に加え、中国からの輸入に頼っていたことが重なり、マスク不足は早くも2020年1月末ごろから深刻化し始めた。

 輸入元である中国の需要は急増し、国内でも通常時の需要が毎週1億枚程度だったのに対し、20年1月最終週だけで9億枚に跳ね上がった。

 政府として急ぎ何らかの対応を打たねばならなかったが、担当官庁である厚生労働省は医療や感染症そのものへの対応に追われており、人員が逼迫していた。そこで私は3月上旬、製造業を所管している経済産業省などから成る関係省庁混成チーム、いわゆる「マスクチーム」を厚労省内に立ち上げた。まさに旧弊である行政の縦割りを打破し、機能に特化したチームを組織したのである。

 さらに4月以降は、医療用のガウン、フェイスシールド、手袋などの調達・配布も担当する「マスク等物資対策班」に役割と名前を変更し、引き続き必要物資の確保や医療機関などへの優先配布に当たった。最大時には約120人がこのチームに投入され、各省の特性を生かして事態に対処した。経産省は補助金を活用してメーカーの国内生産ラインの増設を支援。教育現場でのマスク供給を担当し、大学病院を所管する文部科学省にも加わってもらった。