都心北東部と南西部で
混雑率に顕著な違い
このように輸送力と輸送量の関係上、混雑率の変化は単純比較できない。また輸送量にあわせて輸送力を削減するか、混雑を緩和するために輸送力を維持するかは事業者の判断であり、混雑率はどこまでも相対的な指標である。
それを承知の上で、首都圏各路線の混雑率をコロナ前後で比較すると次の図のようにまとめることができる。赤い矢印は2023年の混雑率が1~10位の路線、オレンジの矢印は11~20位の路線、水色の矢印は2019年から順位が20位以上下落した路線だ。丸印が最混雑区間で、矢印はそこに向かう方向を示している。
すると、中央線と常磐線より北から都心に入る路線は依然として混雑しているが、南西から都心に入る路線の混雑率は大きく下がった様子が浮かび上がる。2023年度決算の輸送人員を見ても、都心南西部を基盤とする事業者の通勤・通学定期輸送人員の減少率は高く、北東部を基盤とする京成の約12%減、東武の約13%減に対し、東急と京王は約20%も減少している。
東急を始めとする大手私鉄の多くは、JR東日本ほどラッシュ時間帯の減便に積極的ではないため、混雑率が相対的に低くなる点は考慮しなければならない。それでも銀座線(赤坂見附→溜池山王)の約47%減、半蔵門線(渋谷→表参道)の約35%減、田園都市線(池尻大橋→渋谷)の約29%減、東横線(祐天寺→中目黒)の約28%減のように、JR線を除く減少率上位路線の多くは南西部を走る路線だ。