スマホを見ていると頭がボーっとすることはないだろうか?それは脳が悲鳴を上げている証拠かもしれない。実は、スマホを長期間使い続けていると、脳の形に変化が起きることがわかってきたのだ。スマホ中毒者の脳の中身は果たしてどうなっているのか、実験結果とともに見ていこう。本稿はキャサリン・プライス著、笹田もと子訳『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
精神活動の質と量が脳の構造に
大きな変化を起こしている
臓器の構造は形成段階を終えると、もはや大きく変化することはない。意外なほどつい最近まで、科学者たちは脳の構造も(そして、個々のニューロンのはたらきも)同じように変化しなくなると考えていた。ところが、じつは脳は絶えず変化していることがわかってきた。さらに驚くべきは、私たち自身がその進行に多少なりともかかわれるというのだ。
精神活動と実践が脳の構造と機能に変化を起こした実例として、よく知られているのはロンドンのタクシー運転手だろう。
この仕事の志願者は、およそ2万5000の通りの位置と名前、市内でよく使う320のルート、そうしたルートから半径800メートル以内の観光スポットなど、ロンドン市内の地理についての膨大な情報を頭に入れなければならない。
運転手として認められるには、“ナレッジ(知識)”というシンプルな名前の、非常に出題範囲の広い試験に合格する必要がある(だれもがスマホを持つようになった現代でもその点は変わらない)。
2000年、ロンドン大学のエレノア・マグワイア率いる研究チームが、ある調査結果を発表した。ロンドンのタクシー運転手の脳をMRIでスキャンし、この街の複雑な地理を何カ月もかけて覚えた経験のないふつうの人の脳と、どう違うかを調べたのだ。