期待に入り混じる多少の心配を吹き飛ばしたのは、米津玄師が歌うオープニングと、シシヤマザキが手がけた色彩豊かなタイトルバックの効果だろう。『さよーならまたいつか!』は深い悲しみと希望が入り混じる歌詞であり、これに合わせてさまざまな職業の女性たちが踊る(最終回を来週に控え、NHKはスペシャル番組の公開と同時に、オープニングの完全バージョンをYouTubeでも公開した。フルバージョンの後編では、これまでの名場面が振り返られており、ここまで見守ってきた視聴者を感涙させている)。
また、初回の冒頭で日本国憲法の第14条( すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない)が読み上げられたことで、製作陣の意気込みや姿勢が視聴者にわかりやすく伝わった。
一つでもお腹いっぱいに……
重すぎるテーマがてんこ盛りの後半
とはいえ、扱うのが法律の世界であり、朝から見るドラマとしては重たすぎやしないかという懸念もあった。しかし前半では、主人公・寅子の家族や「女子部」の仲間たちとの交流がベースにあり、ここに法曹を目指す女性の苦悩が重なることで、感情移入しつつ見ることができた。
物語が後半になると時代が戦後に代わり、寅子も家庭裁判所の判事や所長を務めるようになる。少年犯罪に向き合う家裁の「愛の裁判所」という方針や、その後の少年法改正、原爆裁判、尊属殺人の最高裁判決、あるいはリベラル派法曹の弾圧「ブルーパージ事件」も登場する。
加えて、寅子のプライベートから選択的夫婦別姓や事実婚についての検討、友人の男性弁護士・轟が同性愛者であることから性的マイノリティへの視座、女子部の学友だった「ヒャンちゃん」の娘が学生運動に身を投じる様子など、一つでもお腹いっぱいのテーマがてんこ盛りとなった。