同じように、没入体験を味わえたのが、東京・麻布台ヒルズの体験型ミュージアム、「チームラボボーダレス」です。
最も驚いたのが、カフェ「EN TEA HOUSE-幻花亭」がアート作品である「チームラボボーダレス」の一部に組み込まれていたこと。通常、美術館・博物館では、作品を見終わったあとに、カフェで食事をしたり、お土産店で買い物をしたりしますよね。つまりアートの世界とビジネスの世界は完全に切り離されています。ところが、「チームラボボーダレス」ではその2つが見事に一体化していたのです。
「EN TEA HOUSE-幻花亭」の見どころは、食べ物・飲み物とデジタルアートの融合。スタッフが注いでくれたお茶をじっと見つめていると、お茶の上で花が咲いていったのにはビックリしました。まるでお茶を飲んでいる自分がまた作品の一部になったような感覚になりました。
「ユニクロ銀座店」でも「チームラボボーダレス」でも、こんな没入体験ができるとは思いもしませんでした。独自の世界観、空間の統一感、アートとテクノロジーの両方をビジネスに生かす手法は、日本企業ならではのものではないかと思います。
佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。講演依頼等お問い合わせはhttps://www.satochie.com/。