『乗興舟』など30点が集結

乗興舟伊藤若冲が描き、大典禅師が賛をつけた『乗興舟』(1767年)  画像提供:福田美術館
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果蔬図巻』は、76歳の若冲が葡萄、梨、唐辛子、ウド、冬瓜など実にバラエティーに富む野菜や果物を描いた巻物です。晩年の若冲は主に水墨画を描きましたが、この作品はとてもカラフル。巻物の左端につづられた若冲の署名「米斗翁行年七十六歳画」や、若冲と親交の深かった相国寺第113代住職の「大典禅師」こと梅荘顕常(ばいそうけんじょう)による跋文(ばつぶん)、今でいう“あとがき”と共に楽しめます。

 展覧会では、若冲が最初期に描いた『蕪に双鶏図』をはじめ、初期から晩年までの30点が一堂に会します。『果蔬図巻』と共に、もう一つの新収蔵作品である『乗興舟(じょうきょうしゅう)』にも注目です。こちらは50代で手がけた版画による絵巻で、京都の伏見から大坂まで淀川下りの情景を墨のグラデーションで表現し、やはり大典が詩歌をつづったコラボ作品です。

 この展覧会では、若冲が影響を受けた中国人画家の沈南蘋(しんなんぴん)、その直弟子の熊斐(ゆうひ)の他にも、京都や大坂で活躍した画家たちにもスポットライトが当てられています。

 蔵をイメージした展示室、縁側のように外とのつながりが感じられる廊下、網代をデザインしたガラス窓など、日本に古くからある意匠とモダンとを融合させた館内の空間そのものも見どころ。ミュージアムカフェでは、大きなガラス窓越しに渡月橋を眺めながら、季節のパニーニや、「福」のロゴをあしらったパフェなどが堪能できます。

蕪に双鶏図若冲最初期の作品『蕪に双鶏図』  画像提供:福田美術館
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