12月上旬からは「琳派」展も

タペストリー錦市場のアーケードを彩る若冲画のタペストリー

 ちなみに、伊藤若冲といえば「琳派」とセットで取り上げられることも少なくありません。琳派とは、中国の影響を受けた唐絵が主流の江戸初期に大和絵を復興させた俵屋宗達(?~1643)や本阿弥光悦(1558~1637)を元祖とし、尾形光琳(1658~1716)と乾山(1663~1743)兄弟、酒井抱一(1761~1828)と鈴木曽一(1796~1858)といった具合に、およそ1世紀おきに盛り上がったムーブメントです。

 室町時代から江戸初期にかけ一世を風靡(ふうび)した狩野派のように、特定の師匠に入門したり、絵師である親や親戚のもとで学び技法を受け継いだものではありません。そこにあるのは先達の美意識や技法へのリスペクトのみ。「琳派」という名称もその系譜も、比較的最近から言われるようになりました。

 若冲は必ずしも「琳派」でありません。狩野派や中国絵画を模写することで画力を高め、独自のスタイルを確立していった異端の絵師です。第21回で触れた細見美術館にも若冲や琳派の作品が数多く所蔵されています。少し先になりますが、「琳派展24『抱一に捧ぐ ―花ひらく〈雨華庵〉の絵師たち―』」が12月7日からこちらの美術館で開かれますので、日程を手帳にメモしておきましょう。