儲かる農業2025 日本の夜明け#3決算会見に臨む農林中央金庫の奥和登理事長(11月19日、東京都千代田区で) Photo:JIJI

農林中央金庫は2025年3月期、1.5兆円規模の赤字に沈む見込みだ。農林中金の巨額赤字の引き金となった米国債の運用失敗の原因などを検証する農水省の有識者会議の議論が大詰めを迎えている。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#3では、同会議が“政治的な配慮”からか、意図的に議論を避けている、農林中金のガバナンスの重大な欠陥を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

理事7人中、運用経験者は2人だけという
人選をした経営管理委が抱える複数の問題

 政府内で、農林中央金庫のガバナンスの問題が取り沙汰されている。農林中金が2025年3月期、1.5兆円規模の赤字に沈む可能性があることを公表しており、赤字が2兆円近くになる事態も示唆しているからだ。

 メガバンクが過去最高益に近い利益をたたき出す中で、農林中金だけがなぜ「独り負け」になっているのか。

 その原因を明らかにするため、監督官庁である農水省は、有識者でつくる検証会の議論をスタートさせた。年内にも農林中金への提言の原案をまとめる。

 11月25日に開かれた検証会の2回目の会合までの議論では、(1)農協などが集めた貯金をどのように運用するかという方針を決める理事会に市場運用経験者が少なかった、(2)米国金利の上昇局面で米国債を機動的に売却できないなど組織体制に不備があった、(3)理事が生え抜き職員のみで、専門性の高い外部の理事の意見を聞くことができなかった――ことなどが問題視された。

 ところが、有識者らによる議論では、有力政治家への忖度の結果なのか、意図的に検証の対象から外されている重大な問題がある。

 次ページでは、表沙汰になっていない農林中金のガバナンス問題の本質と、その問題が農水省の検証会における議論の対象外になっている理由を明らかにする。