謝罪タイミングで効果に歴然の差
ここに「Journal of Business and Psychology」(2016年)に掲載された「意思決定のタイミングがリーダーの謝罪の有効性に及ぼす影響:リーダー失敗後の信頼修復の分析」というレポートがある。
レポートでは、「早急」「適切」「遅延」の3つのタイミングでの意思決定が、リーダーの謝罪の効果にどう影響するかを調べた。簡単に言うと、リーダーが「早く決めすぎた」「ちょうど良いタイミングで決めた」「遅れて決めた」という3つの場合を実験で比べたものだ。
謝罪をするのは、ゆっくりと事態の全貌が明らかになるまですべきなのか、それともさっさと謝ってしまった方がいいのかを調べたわけである。
得られた結果は、以下の通りだった。
実験を通じて、遅延した意思決定は他のタイミングに比べて「より深刻な問題」と認識されることが明らかになった。
具体的には、次のようなデータが示された。
・手続き的公平性:「遅延」の場合、手続きが不公平と感じられる傾向が最も強かった(平均スコア2.65、標準偏差0.95)。
・被害の深刻さ:遅延した意思決定は他よりも深刻と認識される(平均5.15、標準偏差1.04)。
こうした結果から、遅延した意思決定は結果の不公平性に加え、意思決定のプロセスそのものが公正でないと見なされやすいことが分かった。
つまり、謝罪が遅くなること自体が「不公平」であり「被害が深刻」だと見なされてしまうのである。
謝罪が遅れるということで「リーダーが十分な情報収集を怠った」「時間内に決定を下す責任感が欠けている」といった印象を相手に与え、不信感を生むと同時に、リーダーとしての評価を大きく損なう。
さらに悪いことに、謝罪の遅延は単に意思決定のプロセスに対する不満を引き起こすだけでなく、決定による「結果」への不満をも増幅することを示している。