ダイハツはトヨタに飲まれずに
手堅さ&ノリの良さでがんばってほしい!

 先進運転支援システム(ADAS)の煮詰め不足はあったものの、良好な視界とスカイフィールトップがもたらす前席の開放感、長距離走行時の好燃費により、ネアカなクルマに仕上がっているタフト。グラストップを標準装備化したダイハツの商品企画の賜物と言えるだろう。

 ダイハツは認証不正スキャンダルで販売を大きく落とした。現在はトヨタ自動車から派遣された井上雅宏社長を中心に、トヨタ主導での経営改革が進められている。

 法令違反をなくす、組織の風通しを良くするといった改革はもちろん必要であるが、忘れてはならないのは、ダイハツとトヨタは違う会社だ。不祥事の背景に、開発スケジュールがあまりにもタイトで業務フローが崩壊したことが挙げられる。それが改善されれば、ダイハツは元々、業界内でも評判の手堅さがある一方で大阪企業らしいノリの良さもあった。

 軽のスライドドア式スーパーハイトワゴンの嚆矢である初代「タント」を発売した当時、「面白いと思って作っちゃいましたが、こんなに背が高いクルマ、売れるんですかね?月販目標5000台はちょっと欲張りすぎかも」(ダイハツ関係者)などと笑っていた。

 軽でありながら電動バリオルーフを装備するオープンカー「コペン」しかり、フォルクスワーゲン「ミニバス」風のカラーリングを特徴とする「ムーヴキャンバス」しかり、ウケ狙いを行動のモチベーションにするのはお家芸である。

 不祥事で逆風が吹くと、そういった企業風土までネガティブに捉えられがちになる。しかし、風土というのは法令順守とは別のレイヤーの問題で、人間でいえば生まれ育つ中で醸成された性格のようなもの。それを後天的に無理やり変えると、往々にして自分を見失うことにつながる。

 ダイハツは、タフトのようなネアカなクルマをめげずに出し続けられるのか。トヨタはダイハツのアイデンティティをどのように生かしていくのか。興味深い。

AppleCarPlay、AndroidAutoを使えるディスプレイオーディオが装備されていたAppleCarPlay、AndroidAutoを使えるディスプレイオーディオが装備されていた Photo by K.I.
後席背面はハードカバーに覆われており、シートバックを前に倒して荷台として使うのには大変適していた後席背面はハードカバーに覆われており、シートバックを前に倒して荷台として使うのには大変適していた Photo by K.I.