![保険大激変 損保の構造的課題が生保にも飛び火!#5](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/650/img_2fb82e6bc9fdec692d90732f46ea5526290243.jpg)
日本生命保険の清水博社長は2025年4月1日に、朝日智司副社長に社長を引き継ぎ、会長に就任する。マイナス金利政策や新型コロナウイルスのまん延、営業職員による不祥事、ニチイホールディングスや海外生命保険会社の買収など、7年間の任期中には日本生命グループの屋台骨を揺るがすピンチへの対処や、グループの姿を大きく変える決断を数多く行ってきた。特集『保険大激変』の#5では、清水社長に7年間で得た成果と課題、そして朝日新社長に期待することなどを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫、構成/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
「ボールを高く遠くに飛ばす」
7年間で掲げた方針は実行できた
――2025年4月1日付で朝日智司副社長が社長に昇格する人事を発表しました。社長を務めた7年間を振り返って、得られた成果や課題などをどのように考えていますか。
社長就任時に目標を策定し、それを実現するための三つの軸をつくりました。目標は「成長し続ける事業基盤をつくり、揺るぎないマーケットリーダーになる」というものです。それを実現するための軸が、収益力の強化と事業の変革、グループ経営の推進です。
収益力の強化は、保険と運用のそれぞれで目標を定めました。まず、保険では良質の契約をたくさん取ることで、それを実行できる営業職員チャネルにするのと同時に、営業職員をバックアップする体制づくりを行いました。運用に関しては、社長就任の2年前にマイナス金利政策が導入されており、環境は厳しい状況でしたが、そういうときこそ運用力を強化しなければならないと考えていました。
事業の変革は、デジタルを営業現場と社内に組み込むことで効率性を上げ、事業変革に結び付けることを目指しました。具体的な分野としては、ヘルスケアが頭にありました。
グループ経営の推進については、それまでもはなさく生命保険も含めて国内保険事業と海外事業を推進してきました。ただ、海外はなかなか期待通りの成果が出ていなかったので、もっと花を開かせたいと思っていました。
社長として主眼を置いてきたのは、成長し続ける事業基盤をつくることでしたね。日々のオペレーションは役員に任せて、将来にわたって成長し続けていくためには何をすればいいのかを考えました。いわばボールを高く遠くに飛ばすことが自分の役割であり、自分の課題でした。
7年間を振り返ってみれば、打ち出した方針について、全てのことを一つ一つ実行していくことができたというのが、総括でしょうか。
――24年3月に策定した新中期経営計画(24~26年度)では、35年に向けてグループ基礎利益を倍増させると、高い目標を設定しました。
日本銀行の金融政策の変更が大きな要因です。マイナス金利が続く前提では、あれほどの前向きな目標は立てられなかったと思います。
運用環境が良くなれば、運用資産が大きいだけに利差益が大きく増えます。ただし、気を付けなければならないのは、利差益が危険差益と比べてあまりにも大きくなると、運用環境によって全体の利益が不安定になってしまうことです。
中長期で安定的な経営をしなければならない保険会社にとって、バランスが崩れるのはあまり好ましいことではありません。なかなか難しいのですが、利差益の伸びに合わせて危険差益も伸ばしていくことが重要です。
――最近では、日系大手生命保険は保障性商品の販売に苦戦していると聞きます。運用環境が良くなれば、保険会社は利回りの良い貯蓄性商品を開発したくなりますし、販売する営業職員も売りやすいので貯蓄性商品の販売に偏ってしまいがちです。
そうであってはいけないと思っています。
25年4月に社長に就任する朝日副社長に対して、清水社長は何を期待しているのか。また、ニチイホールディングスの買収完了から約7カ月が経過しているが、どのような相乗効果をもくろんでいるのか。事あるごとに課題があると発言してきた子会社生保の大樹生命保険や海外事業について、次ページで詳しく話を聞いた。