公認会計士「実名」「実額」2364人ランキング#6Photo:Klaus Vedfelt/gettyimages

監査法人業界では、規模も人材も準大手以下を圧倒する四大監査法人が圧倒的な存在感を持つ。だが、業界内には規模は小さいものの特徴ある監査法人が多くある。特集『公認会計士「実名」「実額」2364人ランキング』の#6では、主要21監査法人を対象に、足元で高まる中堅監査法人の再編機運も踏まえて、カオスマップを作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

中堅で高まる再編機運
行政処分後の動きに要注目!

 2025年1月、中小監査法人関係者の間で、ひそかに話題になった再編が発表された。UHY東京監査法人が監査法人ハイビスカスの東京事務所を、25年7月に統合するというものだ。7月以降、ハイビスカスは本部である札幌事務所のみで運営されることになる。

 UHY東京はコンサルティング業務やアドバイザリー業務の売上高を含めた総売上高は9億2800万円(24年3月期)、ハイビスカスは5億4933万円(同)の中堅監査法人だ。UHY東京はディスカウントストアの「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、ハイビスカスは家庭用品の製造を手掛ける天馬などの監査を担っている。

 両監査法人の再編が話題になったのは、22年と23年にそれぞれ金融庁から業務改善命令を受けていたからだ。

 監査法人に処分が下ると、監査を受けていた上場企業の監査役などから、監査法人の変更が進言されることが多い。その場合、監査法人を変更することがほとんどで、監査法人は一気にクライアントを失い、経営が傾くことになる。

 ハイビスカスはその傾向が顕著だった。22年3月期に7億3200万円だった総売上高は、処分が下された23年3月期には5億7855万円へと減少。24年3月期には非監査証明業務の売上高はゼロになり、総売上高は5億4933万円まで落ち込んだ。

 行政処分が一度下されれば存続が危ぶまれる「ワンアウト・ゲームセット」の傾向が強まっているといわれていたが、ハイビスカスはそうなる前に手を打ったとみられる。

 監査証明業務は、規制強化で年々監査手法が複雑化・難化している。監査法人のガバナンスコード導入も求められており、中小監査法人は体制整備が急務。そこで金融庁は中小監査法人に対して再編を促しており、公認会計士・監査審査会(CPAAOB)のレビューの際に、「経営統合に関して考えを聞かれた」と複数の中小監査法人幹部は明かす。

 処分歴があり、体制整備の強化を求められていたUHY東京とハイビスカスの再編は必然で、金融庁の考えにも沿った動きだ。今後、同様の再編が起こる呼び水になるかもしれない。

 実際、中小監査法人の間では、再編観測が立ち上がっては消えることを繰り返している。次ページで主要な21の監査法人の特徴を取り上げた「主要監査法人カオスマップ2025」を基に、今後の監査法人業界の行く末を大胆に予想した。