カルフォルニア米の輸入は、令和のコメ騒動のおかげでこの先、外食チェーンを中心に購入量は増えるでしょう。この2の部分は目に見えやすい成果が出しやすいかもしれません。一方で3の車の輸入は難しい。全国の自治体でテスラを公用車にすることを義務付けるぐらいしないとトランプ政権にはアピールできないかもしれません。

 では、トランプ関税はこのままいくと日本経済にマイナスしかもたらさないのでしょうか。仮にこの状況が12年間続くとした場合、世界経済にも日本経済にもプラスをもたらす可能性があります。

 それは世界中の旧い仕組みが徹底的に壊されることから始まります。

 思い出していただきたいのは今回の騒動の発端です。最初はカナダとメキシコから始まりました。トランプ大統領といえばメキシコ国境に壁を作ったことが有名で、そのせいで移民が論点だと感じている方も多いかもしれませんが、それだけではありません。

 今、カナダとメキシコ経由で、中国で製造されるフェンタニルという麻薬が医薬品の形でアメリカに流入していると言われています。フェンタニルは痛み止めとして処方もされるのですが、成分はケシ由来のヘロインと類似していて中毒性があります。

 トランプ氏は薬物が大嫌いで、違法薬物のまん延がアメリカ社会を悪くした原因のひとつだと考えています。実際に起きていることは21世紀のアヘン戦争と同じで、違いはかつてはイギリスが中国にアヘンを輸出していたが、現代では中国がアメリカにフェンタニルを輸出しているだけだというのがトランプ氏の立場です。

 中継地となっているカナダとメキシコにもそれぞれ言い分があるのでしょう。官僚的なやり取りだけではアメリカからフェンタニル中毒者をなくすことはできそうにもありませんでした。ところが今回の騒動で、カナダの首相もメキシコの大統領も、この問題を優先して取り組まざるをえなくなった。ここがポイントです。