コンサルティングに希望するのは
リスク&リターンを共有する幹部人材の派遣

並木 コンサル自体には価値があるとお考えですか?

川鍋 自分がコンサルタントとして働いていた時のことを思い返すと、ほんの3ヵ月間のプロジェクトに関わっただけでその業界や企業のことを知ったつもりになり、いろんな提案をしていましたが、経営者の立場から見ると「お前に言われたくないよ」という気持ちになったりもするものです。でも、コンサルティングの本当の価値は、頭の切れる若者たちがまっさらな視点でこの業界を見てくれて、ここに問題があるとはっきり言ってくれるところにあるんですよね。

コンサルタントは問題解決能力を生かして<br />リアルな経営の世界でどんどん活躍してほしい「コンサルの価値は、頭の切れる若者たちがまっさらな視点で見てくれて、ここに問題があるとはっきり言ってくれるところにある」(川鍋さん)

 同じ職場にずっといると、どうしても新鮮な視点をもてなくなってしまいます。ここが問題だと指摘されても、それは何年か前にも言われたんだけど問題なかったんだよね、とつい受け流してしまう。でも経営における様々な課題のターゲットは時代とともに常に動いているわけで、数年前には的の中心を突いていたとしても、今になると少しずれていたりもするんです。そうした時に、改めて明確に問題意識を喚起することはコンサルの役割として非常に重要だと思います。

並木 そういう経験を実際にされたことは?

川鍋 近くを走っている日本交通グループのタクシーを呼ぶことのできる「日交アプリ」は、まさにそうした議論の中から生まれたものです。私はかねがねヘビーユーザーを優遇できるサービスが実現できないか考えていました。並木さんとランチをした時の会話でこのテーマが話題に上がった時、私は条件反射で「それについてはもう十分に考えたよ。いろんな理由で実現は難しいことが分かったんだ」と言っていた。ところが並木さんに、ヘビーユーザーに報いるには経済的に優遇する以外の策もあるのではないか、と言われたんです。

 そこから、「日交アプリ」というサービスのアイディアが育っていきました。ヘビーユーザーは、ゴールド会員というステータスを得られ、かつ優先的に配車を受けることもできる。今や全国47都道府県で展開する全国アプリにまで成長しましたが、この新たなビジネスの打ち出しに成功した意味は、日本交通にとっても極めて大きいと思っています。グローバルに展開し、日本にも本格参入してきた配車アプリ「Uber(ウーバー)」とガチンコ勝負ですよ。

並木 私のエピソードを出していただいてありがとうございます(笑)。コンサルに対して、もっとこうなってほしい、というリクエストはありますか?

川鍋 経営者派遣のような形はあってもいいのかなと思います。例えば日本交通が自社のノウハウを生かして新しい事業を始めたり、既存事業を海外展開したいと思っても、それらをマネジメントできる人材をいかに獲得するかが大きな課題となります。そうした時、コンサルタントを経営者として派遣してもらい、ともに事業をつくっていくわけです。派遣の期間を3年間に限定するなど一定の柔軟性を保ちつつ、リスクもリターンも共有する。そうした手法は、これから主流になっていくのではないでしょうか。

並木 コンサル側も、提案の中身に対して本当に自信があるのなら、そういう依頼に応じてもいいはずですよね。3年後、事業が成功した時にリターンをもらえばいい。

川鍋 結果に対するコミットを強めていかないと、もともとフィーのハードルも高いですし、大企業以外はコンサルティングを使えなくなってしまうかもしれません。