
松元 浩
日経平均株価が29年ぶりに2万5000円台を回復した。株高とともに、米国での長期金利の上昇が株式の業種間格差を是正する契機となり、日本においても出遅れていた割安(バリュー)株が上昇する一方、これまで相場を牽引してきた成長(グロース)株が下落している。成長株を利食い、割安株へと本格的にシフトする「グレート・ローテーション」の環境は、本当に整ったのか。金利が成長株と割安株の価格形成に及ぼす影響を踏まえて考える。

コロナ相場でクオンツ運用が苦戦している。今年2~3月の相場急落時、リスク管理モデルを組み入れたクオンツ運用の多くが、ストップロス・ルールによってポジション削減を余儀なくされた。中には4月以降の戻り相場に全くついて行けないものも散見される。クオンツ運用が直面する構造的な問題を整理し、11月の米大統領選がクオンツ運用の試金石となりうる理由を解説する。

アベノミクスは、安倍首相の任期半ばから停滞してしまった。誰が新総裁に選ばれるのか、そしてアベノミクスは継承されるのか、という点がマーケットの話題となっているが、新政権が従前の政策を踏襲すると、それで混乱は避けられても、日本株の魅力が高まるわけではない。企業の収益性の尺度である自己資本利益率(ROE)を通して、安倍政権が積み残した課題と、日本株の魅力復活のための発想の転換を考える。

コロナ禍での株価急落が呼び水となり、30~40歳代で投資を始める人が増えてきた。投資初心者の多くは、長期での積立投資に興味があるようだが、どのような資産を選ぶべきか明確な考えを持っていない。そこで本稿では、長期投資の本質を説明するとともに、投資に係る6つのリスクから長期積立投資に適した資産の選別法ついて考察する。

筆者は「25年後のびっくり予想」というアンケートで、「25年後も日本の国債利回りは0%」と回答した。今回のコロナショックで、ゼロ金利政策が予想以上に長期化する可能性を真剣に考える必要が出てきた。この環境変化は、資産運用の世界にも大きな影響を及ぼす。ポートフォリオに関する基本的な理論から、資産運用の新しい形について考察する。

ナスダック総合指数が史上最高値目前に迫り、日経平均株価も当面戻らないと思われた200日移動平均線を上回るなど、世界的な株高が続いている。日本におけるコロナ第二波の懸念、米国における黒人暴行死事件抗議デモの激化、中国政府による香港介入など、世界中で悪材料が目白押しにもかかわらず株高を続ける株式相場を見ると、何か「大きな力」の存在を感じる。巨額に膨らむ政府債務の清算方法を検討し、株高を演出する「大きな力」の正体を探る。

高い利回りなどから高金利通貨は人気が高い。しかし、ここ数年軟調地合いが続き、今年に入ってからは新型コロナウイルス禍で大幅安になっている。利回りの高さと通貨の下落リスクは表裏一体であることはよく知られているが、為替で損失を抱えてしまう人が多いのは、一体どこに原因があるのだろうか。高金利通貨の弱点を整理するとともに、損失を抱える個人投資家に向けて処方箋を紹介する。

全世界で143万人の感染者と8万人超の死者(4月8日時点)の被害をもたらした今回のコロナ禍は、終息後の社会の仕組みを否応なしに変え、様々な形で社会全体の費用増加を招くだろう。我々の生活を圧迫するコストアップ要因を整理し、それに対応するために、どんな投資法を考えればよいのか。

NY株式市場は連日、1000ドル単位の乱高下となり、ドル円相場は一時101円台の円高を付け、日経平均株価は2万円割れとなっている。近年は、長期積立分散投資の重要性が広く認識されるようになっているが、今のように不確実性が高い状況に直面し、このまま積立投資を続けて良いか不安を感じる方は少なくないと推察する。相場下落時に積立投資を中断する効果を考えるべく、オプション価格の決定などに使われる二項モデルを用いたシミュレーション結果を中心に、なるべく主観的な相場観を交えずに分析を試みる。

EUを離脱した英国に対し、EUトップは貿易協定の交渉で妥協しない考えを示した。欧州各国で反EU派の勢力が拡大する中、離脱の代償が安くないことを加盟国に知らしめるためだ。しかし一方で彼らは、加盟国に対してEUに留まるメリットを実感できる政策を打ち出せずにいる。域内の成長戦略に関して、金融緩和策に任せ切りだったツケが回ってきたのだ。IS-LM理論から欧州経済の現状を整理し、日本の政策連携をヒントに欧州がとるべき革新的な戦略を提示する。

2020年の金融市場は波乱の幕開け。米国とイランが一触即発の状態になり、市場の楽観ムードはかき消された。米国株が下落する一方で、原油や金価格は急騰。米10年国債利回りは一時1.8%割れまで低下(価格は上昇)し、日本でも6日の大発会で日経平均株価は451円安のスタートとなった。足元では落ち着きを取り戻しつつあるが、金融市場は混乱の中にある。不確実性が高い状況を、投資家はどう乗り切ればいいか。3つの相場格言を通じて、投資戦略を再点検する。

トランプ米大統領が中国との貿易協議に期限はないと発言するなど、米中貿易戦争の先行き不透明感は高まっている。今後の米中の覇権争いは、ASEANに日韓を巻き込む形で、通商面・安全保障面での「陣取り合戦」の様相が強まる。アジア各国は、米中どちらの陣営に近いだろうか。実はそれは、各国通貨の対米・対人民元レートの変動率から推察することができそうだ。

米国を中心にゼロコスト運用が拡大している。2018年に米運用大手のフィデリティ・インベストメンツ社が、信託報酬0.0%のインデックスファンド・シリーズを設定したほか、今年に入りゼロコストの上場投資信託(ETF)が相次いで設定されている。資産運用に係るコストが(金利と同様に)限りなくゼロに向かって低下する潮流は、不可逆的になったように思われる。しかし、投資の世界にフリーランチなどない。運用コストが安く済む代わりに、どこかに思わぬ落とし穴がないかを確認する作業は、今まで以上に重要となるだろう。ゼロコスト商品を選定する際の留意点を考えてみたい。

10年以上にわたり続いてきた世界の景気拡大局面に、終わりが近づいている。米中貿易戦争が製造業のみならずサービス業をも圧迫し始め、最後の砦であった米国の景況感が明らかに悪化し始めたのだ。景気サイクルが「後期」から「後退期」に向かうとき、金融市場はどう変化するのか。そして投資家はどう対応すべきだろうか。

過度な株式第一主義の修正やマイナス金利という投資環境を受けて、株式や債券など金融資産の期待収益率は低下している。このような局面では、実物資産の裏付けがある資産クラスが、安定した投資先として有望と思われる。金融資産としての評価は今ひとつの日本株も、一定の実物資産の裏付けを有する投資対象と捉えれば、再評価される余地は十分にあると期待したい。

トランプ大統領が8月1日に表明した対中関税第4弾に対し、中国当局は同月5日の元レートを7元超の元安水準を容認するなど、踏み込んだ報復措置を取り始めた。毎年この時期に開催される「北戴河会議」を機に、対米強行派の声に押されて米国債売却という切り札を切る可能性も否定できない。ここでは人民元の下値目処と、米国債売却が行なわれるとすれば、その兆候はどこに現れるかを考えたい。

資産保全の観点から金スポット価格は一時、5年ぶりの高値となる1400ドル台に乗せ、6月の月間上昇率は8.0%(ドルベース)に達した。米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の発言をきっかけに、米ドルの通貨価値の劣化が意識されはじめたことが、金の先高感につながっている。金をポートフォリオに組入れることを積極的に検討したい。

米中貿易戦争は新たなステージに入り、交渉結果は「合意か決裂か」の二者択一になりつつある。交渉結果が経済に甚大な影響を及ぼすとき、証券市場における価格決定は、正規分布を前提としたモデルから二項分布のモデルへと移行し、市場はバイナリー化する。バイナリー化した市場の対処方法について考える。

5月下旬に行われる欧州議会選挙で、「EU懐疑派」が3分の1に迫る議席を獲得しそうだ。足もとで注目はブレグジットに向いているが、彼らの台頭によってユーロの屋台骨が揺らぐ懸念はないのか。そのことを踏まえて、選挙に向けた投資戦略を整理する。

財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)が米国で台頭している。大統領選挙を通じて民主社会主義政策に国民の支持が集まるならば、市場は突如その影響を織り込み始めそうだ。
